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笹山登生の発言・寸感アラカルト


2002年3月23日 もう一面の阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)さん

沖縄・伊江島の反戦地主運動で知られる阿波根昌鴻(あはごん・しょうこう)さんが、一昨日なくなられましたが、もう一面の阿波根さんを知らせる記事がすくないのが残念です。

阿波根さんが、反戦地主になるきっかけとなったのは、4万坪の敷地に、沖縄戦までに10年かけて作ってきたデンマーク式農民学校(農民が自活しながら無料で学習できる学校−フォルケホイスコーレhttp://www.itoh.org/io/mermaid/02.html など、下記リンク参照)が沖縄戦で失われ、学校建設のあかつきには先生にさせようとしていた息子さんは、戦死してしまうという、二重の強烈な体験のもとにあったのでした。

1953(昭和28)年7月、米軍は真謝区、西崎区の農地の接収を通告。真謝にあった阿波根さんの家と土地も強制接収され、農民学校の構想は、完全に白紙となりました。

その時の阿波根さんのお気持ちは、いかばかりだったでしよう。

キリスト教信者でもある阿波根さんが、農民学校を建設しようときめたのは、西田天香内村鑑三そして、とおくは二宮尊徳の影響が強かった様です。

1925(大正14)年、キューバへ出稼ぎにいった阿波根さんは、その後ぺルーにいき、そこの古本屋で、西田天香さんのかかれた当時のベストセラー「懺悔の生活」に出会います。

この西田さんの言葉に感動した阿波根さんは、1934(昭和9)年、日本に帰国すると同時に、京都・山科の西田さんが主催される「一燈園」を訪れます。

西田さんは、阿波根さんに、「あなたは、沖縄にかえって農業をした方がいい。」といわれます。

阿波根さんの著書「米軍と農民」(岩波新書)12ページに、農民学校を作ろうとする動機になったこととして、次のように書いています。

「デンマークのグルントーイという、砂漠に泉を沸かしたという人の伝記を読んでおりましたので、真謝の海岸で島でも、最低の土地を一坪一銭、あるいは五厘でせっせと買い込んで、滔々四万坪の土地を集めることができました。 」

ここでいう、「デンマークのグルントーイ」とは、フォルケホイスコーレの思想的な支柱となった、Nikolai FrederikSeverinGrundtvig(1783-1872)のことであるとおもわれます。

また、「砂漠に泉を沸かしたという人」というのは、内村鑑三先生の「デンマルク国の話」の中のダルガス(Enrico Mylius Dalgas) (このサイトに写真があります。)のことでしょう。


内村にデンマークにおけるグルントヴィの重要性を教えたのは平林広人だろうと言われています。http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/archieve/Gott_mensch_Erde2.html http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/archieve/koyama.html参照

また、東海大学の創始者松前重義さんも、グルントヴィの教育思想に感銘したひとりとされています。http://www.time.u-tokai.ac.jp/kokai/ctosho/lib/tenji/34th-1.htm 参照

このように、阿波根さんの思想の本質は、何も先鋭なイディオロギーにもとずく反戦主義者なのではなく、内村鑑三先生に影響された、キリスト教の精神に裏打ちされた農本主義者的側面を多く持つ考え方をされた方であったといえます。

そして、なによりも、「農民こそ慈悲の心を育てるための宗教や、歴史、政治、哲学など、社会について学ぶべきだ。」との確信にもとずくものでした。

私が、伊江島を訪れたのは、ちょうど米軍が伊江島に上陸した4月16日と同じ日でしたが、なんとも、麗らかな島の様子に、ここで、こんな時期に、なんで、こんな悲劇があったのだろうかと、疑ったものでした。

そして、一方で上陸2日目にしてなくなった従軍記者アーニー・パイルの整然と整備された記念碑に対比して、阿波根さんが自費で建設された、決して立派とはいえないが、強いメッセージのこもった反戦平和資料館「ヌチドゥタカラの家」(ヌチドゥタカラとは、黄金言葉(くがにくとうば)のひとつで「命こそ宝」という意味)をみて、私は、攻めるものと攻められるものとの、あまりの対比にがくぜんとしたものでした。

阿波根昌鴻さんの行動を支えてきたのは、イデオロギーではなく、農民を守る気持ちにあったのだと、私は、思っております。

http://www47.tok2.com/home/dugong/01.12_3.html
をみると、晩年の阿波根さんは、若い人にも、その生き方に感動をあたえたようですね。

このURLにある病床の阿波根さんは、昨年暮れの写真ですから、おそらく最後のお写真となったのかもしれません。

最後に、阿波根さんの残した歌を記したいとおもいます。

《花は土に咲く。》
アメリカぬ 花ん 真謝原ぬ 花ん 土頼てぃ 咲ちゃる花ぬ美らさ・・・・    

アメリカの花も伊江島の花も土が頼りで咲いている。花の美しさよ。



参考 フォルケホイスコーレについてのリンク

http://www.folkehojskoler.dk/da/main/main.php?menu=100

http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/society/grundtvig.html

http://www.brendfoh.dk/page.php?emne_id=173

http://www.itoh.org/io/pancake/01.html

http://www.hankyu-edu.com/ken/fuk/skn/skn3.html

http://karin30.flib.fukui-u.ac.jp/karin28.html#sakurai

http://www.bd.wakwak.com/~kankyology/denmark/0312report-jp.html

http://www.asahi-net.or.jp/~pv8m-smz/

http://www1.sphere.ne.jp/globe/Pages/dk_folkhjskl.html

http://www.omega.ne.jp/~kaneko/sub3a-7.htm

http://members.tripod.co.jp/mann/archive/hyougen.html

日本のフォルケホイスコーレの試み

http://yuki.ideas.co.jp/2001/forke00.htm

http://www.folke.binti.net/

http://www.google.co.jp/search?q=cache
:qIRq5yySILcC:elev-jp.egmont-hs.dk/folke_top.html+%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%AB%E3%82%B1%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%AC&hl=ja&ie=utf8


http://homepage2.nifty.com/m-kawakita/fs/denpark.htm

http://www.museum.or.jp/IM/report/museum_topics/weekly/w20001221.html

http://www02.u-page.so-net.ne.jp/ka2/yu-naka/first_rank/yamagata/yamagata.html


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