笹山登生の発言・寸感アラカルト


2002年6月20日

戦略なき税制論議


税制改革をめぐって、諮問会議と政府税調とでの対立が深まっているのだが。

国債増発なしに、歳出を減らし、歳入をふやすための税制論議であることには間違いないのだろう。

正論としては、政府税調の方がすっきりしている。

問題は、当面のデフレ阻止。

政府税調は、デフレ阻止については、あまり問題視していないように見える。

そこが諮問会議との違いとなっている。デフレで、税収も影響を受けるのは、当然なのだが。

税収を上げるには、消費税率の見直しなど税率を上げるか、課税対象のパイを大きくするかしか、どちらしかない。

この課税対象のパイには、量としてのパイと、範囲としてのパイがある。

量としてのパイを増やすには、、法人税の対象としての企業利益の増大や個人消費増のための景気対策やデフレ阻止対策が必要であり、歳出増が果たせない中では、減税がこれに寄与する。

範囲としてのパイの拡大のためには、所得税課税最低限見直しや、各種控除制度の見直し、新税の創設、租税特別措置の廃止などが含まれる。

問題は、これらの異種次元のものを同種と見て、国債発行増加なし−あるいは、つなぎ国債発行-の前提で、パラレルに増税と減税を一致させるという試みだ。

特に、やってみなければわからない外形標準課税など新税と、既存の法人税などと対比させ、実効税率をはじき出すというのは、いかにも乱暴すぎる。

むしろ、この際の視点は、上記URLhttp://www.nikkei.co.jp/sp2/nt16/20020306eimi176606.html のように、国際間の法人実行税率引き下げ競争に耐えうるためには、どうしたらよいのかと言う、視点なのではないのか?

選挙怖さで増税と言い出しえない政府・与党が、レトリックとしての増減税一体論を展開しても、課税される側に、「これは詐欺ではないか。結局は、広く浅い課税増で、デフォルトを逃れうる生贄とされるのではないのか?」との疑心暗鬼が生まれるのは、やむを得ない。

減税をいかに声高に言っても、昨日の株式市場のように、一向に反応を示さない市場の心理を、政策当局者は、知るべきである。

それにしても、当面の景気回復のインセンティブにならない減税を強調することに、どれほどの意味があるのか?http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt5/20020618deei005818.htmlあくまで、減税は、

短期で税収増につながるもののみに意味があるとすれば、効果発現までの懐妊期間の長い研究開発投資減税が、景気回復のインセンティブになるとはおもえないし、相続税・贈与税一体化は、あくまで、国民の手元流動性資金を吐き出させることにねらいがあるのだとすれば、中期的に見れば、短期の贈与税税収増と中期の相続税税収減とでチャラとなる話であるとすれば、このことが、中期的な歳入・歳出バランスの改善に資する話でもない。

となれば、ムーディーズの指摘するように、日本のデフォルトへの道は、決して遠のいているとはいえない。

今、政府が、勇気を持って言うべきことは、中期の税収増につながらず、景気回復に役立たずな減税を、さも意味ありげに言うことではなく、中期の増税方向を国民に指し示すことなのではないのだろうか。

もちろん、租税特別措置の改変は、この際、すべきである。

この日本の財政構造の矛盾を、つじつまあわせで、次の世代に繰り越すことだけは、避けたいものだ。





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