笹山登生の発言・寸感アラカルト


2002年6月9日
からくり民主主義

最近発刊された高橋秀実さんの「からくり民主主義」(草思社,1,800円)という題名の本のなかに、諌早干拓反対運動の故山下弘文さんのことが、書いてあった。

ヤジウマ的に反対運動に参加した人と、山下さんの考えのすれ違いについて

「新聞、テレビの反対派コメントはすべて、山下氏。環境保護に尽力した人に贈られるゴールドマン環境賞も、山下氏個人に贈呈された。一人注目を浴びる山下氏に対する誹謗中傷が内部に巻き起こり、ヤジウマ運動は崩壊、その後、過労がたたったのか、山下氏は、2000年夏に急逝した。(以下、山下氏の奥さん八千代さんの言として)「山下は、干拓そのものに反対するのではなくて、一貫して農水省に見直しを求めていたんです。そのための材料を常に相手に提供しておりました。」」(同書108ページ)

というものだが、前半の反対運動内部の葛藤がどうなっていたのか、よくわからないが、後半の奥さんの言として引用されたくだりには、私も思い当たる節がある。

あるとき、農水省とNGOとのやり取りの席で、山下さんが、えらく興奮してしまって、きつい言葉を吐いたので、私は、「そんな、冷静な話し合いをぶち壊すようだったら、私は、この場から手を引く。」と、いさめたことがあった。

それから後のこと、諌早の酒場で、ムツゴロウをさかなに、酌み交わしたとき、山下さんが私にいわれていわく、「あの時、私は,(笹山にいわれて)、反対のみの運動の不毛さを、はっと思ったんです。それからの私はかわりました。」と、述懐されていた。

私の出すぎた真似が、山下さんを変えたとは思わないが、確かに、反対のみのNGOから、提案するNGOへの転換の一つの契機にはなったのだと、今でも思っている。

その後、「科学的批判とオルタナティブの集大成」として、「諌早干潟の再生と賢明な利用」という本が、NGO,学者グループ一体となってあらわされ、わたくしも、そのなかで、一つの提言をさせていただいた。

そして、その後の諌早干拓事業は、「淡水化と管理水位」という一点を除いては、ほぼ、、この本に記載されたわたくしの縮小案の線で進んでいる。


纏め上げる政治の大事さが、このところ、高橋秀実さんのいわれる「からくり民主主義」の横行で、機能不全に陥っていると、私には、見えるのだが。

追記-上記の写真は、山下さんが、1998年に受賞されたゴールドマン環境賞である。
   現物を山下さんに見せてもらったことがあるが、形が、メビウスの輪になってい       る。


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