笹山登生の発言・寸感アラカルト


2002年2月10日 世界の狂牛病問題は、すでに、新たな展開をみせている 

世界の狂牛病問題は、日本初の狂牛病発見の時期を前後して、新たな展開を見せている。

 

BARB(Born After the Real Ban )問題というものだ。

 

1996年8月1日の肉骨粉等牛由来飼料全面使用禁止後も、BSEの牛がでているのは、何を原因にしてのことかが、科学的に証明されていないというのが、この問題の根本にある。つい最近のニュースによると、先週、北アイルランドで、生後31カ月の牛が、BSEの発症をしたため、生後30カ月前後の牛へのBSE発症の恐怖が高まっているという。1996年の牛由来飼料全面禁止以後、2000年6月に、最初のBARBのBSEが発生し、 2001年8月28日に至るまで、合計6頭の牛がBSEになった。その後、今回の件もふくめ、7頭が発見され、これで、牛由来飼料全面禁止後、合計13頭のBSEが発生したことになる。

 

これについて,SSCは、これまでの原因とされてきたもの以外に、母子感染や牧草汚染の可能性を含めた、新たな汚染の原因があるのではないのか、もし、このBARBの牛が55頭以上でてきた場合には、これまでのスキームをみなおさなければならない、との見解をのべている。また、今回の北アイルランドでの生後31カ月の牛のBSE発生や、3週間前にウェールズで発生した生後29カ月の牛のBSE発生を考慮し、生後30カ月未満の牛について、BSE検査の必要性如何について、今年の5月までに、方針を決めると、公式筋は発表したという。

 

ここでいう、見直すであろう「スキーム」とは、次の二つである。

 

第一は、Date-Based Export Scheme (DBES)というもので、1997年10月2日に英国が決定した。すなわち、1996年8月1日以降の牛肉、牛肉製品の輸出禁止 措置で、はたして十分なのか、ということについての疑義である。

 

第二は、Over Thirty Month Scheme (OTMS)

というもので、これは、1994年の初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病発生をへて、1996年の10人の同病発生をうけて、1996年4月から実施されたものである。すなわち、原則生後30カ月以上の食肉の販売禁止措置のみでは、人への変異型クロイツフェルト・ヤコブ病対策としては、はたして十分なのか、ということについての疑義である。

 

SSCは、昨年末に、このBARB問題につき、いくつかの仮説の報告書を出した。

 

ここでの結論は、結局は、狂牛病の原因は、 確率論的には、おおよその検討はできるが、実の原因は、何もわかっていないのが世界の実情という、まさにショッキングなものなのである。

 

この報告書においては、牛の生体での狂牛病の潜伏期間についてすら、10カ月から15カ月の間とも、2カ月から3カ月の間とも、説はあるが、はっきりしたことは分からないとしている。さらに、潜伏期間中の牛肉を人間が食べて、それがvCJD発症の引き金になるかどうかなどは、SSCとても、わからない有様なのである。ましてや、1995年以来イギリスで発症した104人の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者で、今なお生存しているのは、9人にすぎないというが、このような状態では、この変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の人から人へのリンクの解明などというものは、はるかに時間がかかるものと予測せざるを得ない。 

10月18日より行なっている日本の全頭検査について、一部に、無駄との意見があるようであるが、とんでもない見解であることが、上記の状態からわかるであろう。 むしろ、それをいうのであれば、 日本の検査万能主義が、もっと必要な感染ルートへの解明の努力をしないことのエクスキューズになってしまっていることを、これら、ジャーナリズムは、つくべきであろう。「BARBの原因解明」という、世界の新たな狂牛病問題の展開の解明のためには、 日本の全頭検査は、むしろ、必要なことであるが、だからといって、検査が安全保証の手段であるかのごとくとらえるのは、根本的なまちがいであり、もっと必要なのは、感染ルートの解明であることを、我々は、この際、自覚しなければならない。すべてが、的違い・勘違いのとらえ方をしている、一部ジャーナリズムも一部政界も、BSEを政局の具とすることはやめて、世界的にも、どんどん新たな疑義の生まれている狂牛病の諸課題解決に全力投球することが、日本の畜産酪農民や消費者の為になるのではないのだろうか。

 



参考−BARB問題に関するリンク集
http://europa.eu.int/comm/food/fs/sc/ssc/out237_en.pdf

http://europa.eu.int/comm/food/fs/sc/ssc/outcome_en.html

http://www.defra.gov.uk/animalh/bse/whats-new.html

http://www.which.net/campaigns/bse/sep00/sc_news.html

http://www.which.net/campaigns/bse/dec00/sc_news.html

http://www.adsa.org/adsatoday/02janadsa_today.htm

http://www.extension.iastate.edu/files/fscurrent/20011205174957.txt

http://neon.airtime.co.uk/bse/PA1212.html

http://www.konsument.at/seiten/p2445.htm

http://www.danone-institute.be/communication/pdf/security/evopdbnl.pdf

http://www.frisona.com/web/tecnologia/articulos/art16.htm

http://news.bbc.co.uk/hi/english/uk/newsid_1839000/1839504.stm

WAPIC(北林寿信)情報


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