笹山登生の発言・寸感アラカルト


2001年9月20日 日本の狂牛病対策-3つの疑念と、とるべき対策


目次-クリックすると該当個所にジャンプできます-

危機管理マニュアルがないために発生したタイムロス

三つの疑念-これまで安全だったのか?肉骨粉だけか?アメリカへの影響は?-

  本当に、狂牛病に安全な国だったのか
  疑うべきは肉骨粉だけなのか
  ヤコブ病に至る連鎖のピラミッドはすでに築かれているとみるべき
  日本は他国への汚染源となってはいけない

とるべき三つの対策
  徹底したリスク管理とトレーサビリティの確保を
  EUなみの検査体制を

  行政自らが風評を招いていると自覚すべき

スーパーはすでに狂牛病シフト完了

狂牛病を超えて-BSEタスクフォースの設置を-


参考1-笹山登生の政策データベース「リンク集-日本の狂牛病対策」

参考2-科学雑誌「ネイチャー」9月27日号「日本の狂牛病対策批判記事」抄訳


危機管理マニュアルがないために発生したタイムロス

 

2001年9月10日、農林水産省は、千葉県白井市で、狂牛病の疑いのある牛が発見されたと発表した。

その間にいたる時間の経過は次のとおりである。

8月6日、食肉処理場でと畜の牛が起立不能、食肉処理場で脳(延髄)を採取し、(独立行 政法人)動物衛生研究所で検査実施。

8月15日動衛研でプリオニクステストで陰性を確認

8月24日千葉県 病理組織学的検査で脳の組織に空胞を認める。

9月6日 当該病理組織学的検査用材料を動衛研に送付

9月10日 動衛研、病理組織学的検査で空胞を確認。免疫組織化学的検査で陽性反応確認

簡単にいえば、「当初のプリオニクステストで陰性だったが、空胞確認で 免疫組織化学的検 査をしたら陽性反応確認」ということだから、狂牛病への危機管理検査マニュアルがなかっ たため、疑わしい牛発見から一ヶ月も、時間のロスが発生してしまったということだ。

また、検査に適切な部位を検査機関に提供していなかったという報道もある。(ここも参照)

日本にもいずれは狂牛病はくるということは、専門家であれば百も承知のはずだったの に。 そのための危機管理マニュアルはなかった。

 

一刻をあらそわねばならない狂牛病対策のはずなのに、タイムロスはこれにとどまらなかった。

狂牛病の疑いのある牛についての、9月10日発表以降の報告の日時を整理してみると、次の様にな る。

9月10日農林水産省、疑惑の牛を「頭以外を焼却した。」と発表

9月12日千葉県は、疑惑の牛が飼料加工業者に渡ったことを把握し、そのことをFAXで農林水 産省に報告

9月13日夕方、徳島県の製造業者が、その事実を徳島県に報告。県は、そのむねを農林水産省 に報告。

9月14日夜、農林水産省は、そのむねを公表。

千葉県がその事実を農林水産省に報告してから、2日もたっている。

ばたばたしていて、千葉県からのファックス を見る間がなかったということなのらしい。

 

以上の状況をみると、要するに、タイムロスをできるだけ短縮しうる、システム化された危機管理マニュアルが、農林水産省には、なかったということな のだろう。

かねてから、日本や台湾などが極めて狂牛病伝染の可能性が強いと指摘されていたに も関わらずである。

驚くべき危機管理意識のなさであり、あきれかえるばかりである。

そして、9月21日深夜、英国の獣医研究所(the Central Veterinary Laboratory (CVL) )は、狂牛病と断定した。

このとき、不名誉にも、日本は、アジア初の狂牛病汚染国となった。

 

三つの疑念-これまで安全だったのか?肉骨粉だけか?アメリカへの影響は?-

 

私は、日本の狂牛病対策について、以下の3つの点について、疑念をいだいている。

 


本当に、狂牛病に安全な国だったのか


第一は、はたして、これまで、日本が、農林水産省のいうように、本当に、狂牛病に安全な国だったのだろうか。という点である。

この点についての、海外と日本国内の情報には、著しい格差があるのに気ずく。

先だってのNHKの狂牛病の特集番組でも触れられていたが、2000年10月26日、イギリスで、狂牛病報告書(The BSE Inquiry Report)が出た。

この報告書のうちのVolume 10: Economic Impact and International Trade 7. Exports of MBM and compound feed, gelatine, tallow and medicines
で、1988年の肉骨粉輸出禁止以降も、これまでの主力マーケットのEUにかわり、アジアなどの日本をふくむ第三国に対し、肉骨粉の輸出が急増したとの報告がされている。(日本を含む第三国へのMBMの輸出について、具体的な国名について記述したSkilton氏の書簡(1990/02)はこれである。)

ついで、2001年2月4日、イギリスのサンデータイムズが、次のような報道をした

イギリス最大のレンダリング会社「Prosper de Mulder」が、1988年7月の肉骨粉使用禁止後 も、1996年までに120万トンの飼料を、韓国、日本、イスラエル、台湾などに鶏や豚の飼料用 として、輸出していたとの報道である。(
サンデータイムスの伝えるMBM国輸出実績はこのとおりである。http://www.sunday-times.co.uk/news/pages/sti/2001/02/04/bsetable.html)

「Prosper de Mulder」社が肉骨粉飼料(MBM)を輸出していたとつたえられた主な国は、 インドネシア、イスラエル、日本、ケニア、レバノン、マルタ、サウジアラビア、シンガポ ール、韓国、スリランカ、台湾、タイ  などである。


これらの経緯については、http://www.mad-cow.org/00/feb01_brazil.html#fffにも詳しい。

SSCは、ギリシャを除くEU各国ヤ米国豪州などのGBRアセスを終え、2001年1月より、ウルグァイを皮切りに、26カ国の第三国GBRアセスにとりかかった。

2001年4月2日、EUのSSCは、次の第三国の狂牛病のGBRのアセスをした。

その対象となった国は、ブルガリア、イスラエル、中国、コスタリカ、エルサルバドル、ア イスランド、日本、ケニア、マケドニア、モロッコ、ナイジェリア、ルーマニア、スロバキ ア、タイ、ジンバブェ、の16カ国であった。

アセスの結果、狂牛病の可能性のまったくないレベル1となったのは、コスタリカ、エルサル バドルの二カ国であり、ほとんど狂牛病の可能性のないレベル2となった国は、ケニア、ナイ ジェリアの二カ国であった。

残りの12カ国は、日本も含め、狂牛病の可能性のあるレベル3となった。

このレベル3となった国のうち、ルーマニアとスロバキアの二カ国については、ファイナルレ ポートが作成され、GBRレベル適用となった。

ルーマニアは、EUより22,000トンの生体輸入と肉骨粉(MBM)が輸入された故であり、スロバ キアは、ドイツから2,400頭の生体輸入と少量の肉骨粉(MBM)が輸入された故である。(追記-2001/09/27にスロバキアにも狂牛病が発生の模様)


2001年5月16日、SSCは、コスタリカ、ケニア、ルーマニア、スロバキアにつき、ファイナルレポートを作成し、GBRレベル格付けを公表した。

2001年7月4日、SSCは、エルサルバドル、ナイジェリアについて、ファイナルレポートを作成し、GBR格付けを公表した。

この間において、日本は、レベル3となったことにたいし、ファイナルレポートの作成を延期するよう、SSCに要請し、5月11日、SSCは、ルーマニア、スロバキアとともにレベル3とするオピニオンを公表するはずの日本についての発表をとりやめた。

この日本のファイナルレポート延期要請に対し、 次のような批判があびせられた。

http://www.purefood.org/madcow/tokyo61701.cfmhttp://www.vegsource.com/talk/lyman/messages/9535.html では、日本はSSCのカテゴリーランキングを直視し、対策を練るべきとの論調で ある。

http://www.rense.com/general11/bse.htm http://www.which.net/campaigns/bse/jun01/sc_news.html もおなじであるが、もし、 このとき(2001/06)に、万全の対策を講じていたなら、今日のパニックはかなり軽減されたの ではなかろうか。(参考-ゼロリスク探求症候群)

この時、農林水産省の熊沢事務次官は、記者会見で、相変わらず、安全性を強調していた。

しかし、国内対策の実情は、今回のパニック騒動ではからずも露呈したように、とても、胸を張って安全宣言できる代物ではなかった。

ドイツでは、狂牛病対策の遅れで、二人もの閣僚が辞任した

それに匹敵しうる現在の日本の実態である。

 


疑うべきは、肉骨粉だけなのか


第二の疑念は、はたして疑うべきは、肉骨粉だけなのだろうか。という点である。

EUは、今年の7月4日、牛脂(タロー)、ゼラチン、ファットにつ いても、狂牛病の危険ありとのガイドラインをしめした


SSCのタローとゼラチンに関する見解は下記URLを参照(PDF)
タローはhttp://www.europa.eu.int/comm/food/fs/sc/ssc/out228_en.pdf
ゼラチンはhttp://www.europa.eu.int/comm/food/fs/sc/ssc/out227_en.pdf

これまで、タローと狂牛病との関係については、科学的根拠がうすいとのことで、灰色扱い をされてきた。

しかし、その安全性については、かなりの議論があった。

タローと狂牛病との因果関係の論争については、 http://www.cyber-dyne.com/~tom/tallow_docs.html

タローのBSEへの感染性について URL: http://sparc.airtime.co.uk/bse//tallow.htm を参照願いたい。

また、EUの1997年7月のSRM禁止措置決定に対し、タローのEUへの輸出国であるア メリカのレンダリング産業が、かねてから訴訟絡みの反発をしていた。

今年1月、EUの科学委員会は、固形分含量0.15パーセント以下の精製分についてのみ、安全性を確認した。

日本国内では、今年の1月、肉骨粉と同じく、タローなどについても、EUよりの輸入禁止措置を行なった。

この時、ニュージーランドや豪州なども、日本同様、EUよりの輸入禁止措置を、次のTariff Codesの品目について、行った。(http://www.moh.govt.nz/bse.html参照)

飼料としてのタローの使われ方としては、粉末牛脂添加飼料があったり、また、コンプリー ト・フィード(TMR)にタローが配合される場合もあり、さらに、子牛代用乳についても、脱脂粉乳にレシチンなどとともにタローを混入するばあいもある。

今回、 http://www.maff.go.jp/work/press010917-04.htm で飼料構成の中身が公表されたが、このうち動物性油脂は規制外との注釈がつけられている。

しかし、上記のことから、タローなどについても、肉骨粉についてと同様の、トレースが必要なものとおもわれる。

なお、ゼラチンについても、医薬品などについては、ゼラチンを使わないカプセルなど、すでにBSEフリーの対応がとられつつある。

牛肉については、BSE Inquiryにおいても解体処理過程における汚染が懸念されているし、肺部分がソーセージに混じることへの危険性ベビーフードに混じる牛舌の危険性なども指摘されている。

MRM-Mechanically-Recovered -Meat -については、すでにSRM--特定危険物質-となっているが、これについても、他の肉との混入が、事実上見分けられないのが実情である。

牛乳についても、長らく安全だとされているものの、今年の1月には、牛乳の安全性についての再アセスをすべきとの意見http://www.which.com/campaigns/bse/jan01/sc_news.htmlが出されたり、昨年8月には、イギリス政府は、80万ポンドの予算を覚悟で、そのための中期的検討をはじめたところである。

さらに、その他牛肉加工食品についても、http://www.viva.org.uk/Viva!%20Campaigns/BSE/beefproducts.htmに見るような安全性への懸念が示されている。

なお、これは一つの説だが、有機リン系農薬が牛の脳内のプリオン形成に大きく影響していると唱えるひとがいる。

したがって、畜舎内の蝿やダニなどの駆除に、ホスメット(Phosmet)等の有機リン系殺虫剤を使った畜舎で育てられた乳牛からの牛乳は危険であるとの説がある。(ホスメットについては、こちら参照)

スクレイピーとBSEの関係については、これまで、直接的な関係はないとする説が有力であったが、山内一也教授帯広畜産大学の品川森一教授などによると、一部の種類のスクレイピーがBSEを引き起こすとの説がある。

これまでの日本におけるスクレイピーの発生状況はこのとおりであるが、特に北海道・士別市において、1996年6月10日に発生したスクレイピー( この記事も参照 )と今回の日本のBSE発生との因果関係については、検証する必要がある。


ヤコブ病に至る連鎖のピラミッドはすでに築かれていると見るべきである。


BSEが鶏や豚に感染するかどうかについては、John Collinge博士John Krebs博士との間に意見の対立がある。

また、肉骨粉の全面禁止については、EUにおいても、コスト高により相対的に不利となるフランスやドイツでの国内課題があったように、日本国内においても、ある程度のコスト高対策を伴わなければならないものであろう。

いずれにしても、このような疑いがある現状では、上記のような業界対策整備を前提として、牛以外の豚・鶏・ペットの飼料や肥料などについても、肉骨粉等の使用は、国外物・国内物問わず、全面的に禁止すべきものと考える。

狂牛病の発生初年度の発生件数は、いわばその後の年の発生状況の先行指標となっているのが現状である。

ベルギーでは1997年初めて1頭発生し、翌1998年には6頭発生した。

スペインでは、2000年初めて2頭発生し、翌2001年には39頭発生した。

スイスでは、1990年初めて2頭発生し、翌1991年には8頭発生した。

一頭発生し、それで終わっているのは、リヒテンシュタインぐらいしかない。

日本においても、今回の一頭の発生は、今後必ず、数頭発生する予備軍がすでに存在していることを、しめしていることを、覚悟しなければなるまい。

「肉骨粉−牛の狂牛病-人間のクロイツフェルト・ヤコブ病」という連鎖のピラミッドは、すでに日本において築かれているとみるべきである。

行政は、その連鎖の鎖を断つこと-すなわち肉骨粉などの使用の全面禁止にのみ、今専念するべきである。

そのことのみが、風評被害を防ぐ唯一の道である。

なぜならば、真実が何であるかわからずして、また、語らずして、何を風評であるといい、何を風評でないといえるかは、農林水産省とて、断定できないからである。




日本は他国への汚染源となってはいけない


第三の疑念は、アメリカをはじめとした他国への影響である。

9月17日、各国の狂牛病状況の緊急情報を発信するCEIが、1998年から2000年3月 までに、日本からアメリカに輸出された73頭の家畜と肉が汚染されていないかを懸念するレ ポートを発信した。

http://www.aphis.usda.gov/vs/ceah/cei/bse_japan0901.htm参照

日本の疑惑の牛の発症したであろう時期と輸出時期が一致しているため、このような懸念を 示しているのだ。

日本の狂牛病が白か黒かになるかによっては、牛肉の巨大生産地であるアメリカのSSCのGBRレベル2 の現在の格付けが、レベル3に転落しかねない事態となる。

これとあい前後して、米農務省(USDA)は、日本産の牛と牛肉輸入を全面 的に禁止したことを発表した。

http://www.usda.gov/news/releases/2001/09/0179.htm 参照

さらに、1990年から1999年にかけて、日本から生体輸入された237頭について、隔離調査中であるという。

日本の狂牛病騒動がアメリカにも飛び火した形だ。

アメリカにおいて消費者より疑問を投げかけられているのが、Downer Cowの存在である。

腰の立たない、いわゆる「へたり牛」であるが、これについては the Animal and Plant Health Inspection Service (APHIS) による、DAKO社のHercep Test(IHC test- Immuno Histo Chemistry-免疫組織 )は行われるが、BSEテストは、行われていないようである。

脳が液状化しているため、プリオニクステストには反応するがIHCテストには反応しないという。

これらの牛についても、BSEテストをという声が、消費者の間につよまっている。


これらアメリカにもまして、アジアの国々も、日本の狂牛病対策の成否を、かたずを飲んで見守っているのではなかろうか。

いま、日本の狂牛病問題は、http://www.vegsource.com/talk/lyman/index.htmlのように、刻々、世界に報道されている。

日本の責任は大である。

各国の日本よりの牛肉輸入禁止動向は、次のとおり
アメリカ http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt15/20010919dcci017919.html
オーストラリア http://www.nikkei.co.jp/sp2/nt15/20010924diii079424.html
シンガポール・台湾 http://www.asahi.com/national/kyougyu/K2001091102629.html
韓国 http://www.asahi.com/national/kyougyu/K2001092301509.html
中国 http://www.asahi.com/national/kyougyu/K2001091402166.html
フィリピン http://www.kyodo.co.jp/kyodonews/2001/ushi/news/20010911-28.html

 

以上の3つの疑念からすれば、日本が今やるべき対策は次の通りであると考える。

 

とるべき三つの対策




徹底したリスク管理とトレーサビリティの確保を


第一は、日本は、早急にEUにならった狂牛病のリスク管理、リスク分析、リスク・アセスメント、ガ イドラインの制定、をいそぐべきである。

http://senasa.mecon.gov.ar/animal/bseinta1.htm  は、アルゼンチンにおける狂牛病の リスク要素のレポートだが、アルゼンチンでの狂牛病危機管理の対応のポイ ントなどが、総合的に記されている。

これらのリスク管理の最前提となるのは、連鎖を絶つこと−すなわち肉骨粉(MBM)の全面使用禁止である。

その前提のもとで、トレーサビリティ確保のためのシステムを、いち早く構築することである。
 

さらに、と畜から解体処理の過程におけるBSEの危険からの除去である。

これについては、イギリスのBSE Inquiryにおいては、次の工程における清浄肉へのBSE感染の可能性を指摘している。

第一は、除去後の危険部位(SBO)の完全分離補完管理のシステム体制の構築である。

第二は、スタンニングの過程における、脳内BSE汚染体液などの内臓等への逆流である。

第三は、背割り工程における電動のこぎりの回転による血液などの霧状になった形で゜の飛散である。また、スプリットのミスによる髄液の流出も懸念されている。

第一については、カラーリングなどによる区別化など、SBOコントロールの導入と徹底、第二については、空気圧を高めることによっての解消、第三については、のこぎり歯の二枚歯化や、日本の厚生労働省でも導入検討をはじめたとする髄液吸引システムの導入等が、検討課題となっている。

最近になって、EUは、ある種のスタンニング方法についてBSEの危険性があることの報告書をまとめた。

また、EUは、Purchase for Destruction という名の、狂牛病となった牛の買い上げ制度を、今年から立ち上げはじめている。

 

EUなみの検査体制を


第二は、検査体制の抜本的見直しである。

http://www.maff.go.jp/soshiki/keizai/kokusai/kikaku/2001/20010105eu39d.htm は、フランスの狂牛病検査プログラムの詳細である。

フランスでは、狂牛病の疑いがでた場合、次のような対応をしている。

家畜に感染が疑われると獣医はBSE症状の有無、病気の進展状況や家畜の年齢などを調べ、 判断のつかない場合は他の獣医と連携し判断。

確証あった場合、畜産省はBSE感染の疑いを報告。

県研究所はBSEに感染した牛の頭から脳を採取し、フランス食品厚生安全局の研究所へ送 付。

脳組織内に海綿質の存在の有無が確かめられると、農業大臣が公式声明を発表。

BSE感染が確認されれば農場のすべての牛は解体工場で粉末加工される前に屠殺。

飼育者には家畜の交換が補償。売買業者などにも二次的補償。

すなわち、疑いのある牛だけでなく、その固体群の牛についても同様の措置や検査体制をと っていることや、畜産業者などに対する補償措置もあるところに、狂牛病先進国の慎重さと 配慮がみられる。

日本では、OIE勧告(検査方法はOIE Manual:BSE(B83)(1992/3/12発令)に準拠)に沿って、すでに 、国内における牛海綿状脳症の清浄性を確認するために、平成13年4月から牛海綿状脳症サーベイランス http://www.primate.gr.jp/yamanouchi/index.htmlが、実施されてきた。

サーベ イランスでは、これまでに161検体が動物衛生研究所に搬入され、うら140検体の険査が終了 し、今回の件を除き全て陰性であることが確認、残り21検体は、検査中もしくは24ヵ月齢未 満のため、実施せずということだが、これは、プリオニクステスト(ウエスタンプロット法)で やったものか、それとも、病理組織学的検査も併用したものか、不明である。

今回、ウエスタンプロット法とELISA法との併用により、検査の正確さを期すというのが、国の方針であるようだが、私にとってみると、どうも、この二つの検査方法は、やや、時代遅れのものとなっているようにもみえる。

どんぐりの背比べのダブルチェックとでもいうのだろうか。

BSE検出方法のこれまでの主流は、これら、ELISA法ウエスタン・ブロット法によるPrPSc検出であったが、いまや、微量のPrPScであっても、より高感度に検出しうる検出方法に、世界の関心が集まっている。

また、生体のままでの血液検査などによるBSE検査についても研究がすすんでいる

いわば、「狂牛病は、10年20年にわたる緩慢なるテロ」であり、「牛肉は、具体的な発症症状が出る前の潜伏期間中に、ほとんどが食されるという事情」を考えれば、この生体検査の開発は急務である。

EU推奨の4検査方法の長所・短所についてはhttp://niah.naro.affrc.go.jp/disease/bse/bse_ec.htmlをご参照願いたい。

なお、イノムPCR法については、中国をはじめ各国が関心をしめしている。
http://j.people.ne.jp/2001/03/24/jp20010324_3854.html参照

この検査方法は、輸入飼料の安全性も確認できる点に特徴があり、これにとどまらず、今後、食品・加工品・医薬品などの安全性保証に威力を発揮できるものと期待される。

狂牛病問題は、人間の輸血/献血問題にまで影響を及ぼしつつあるが、これについては、EUにおいても、近々指令をだすようである

すでに、オーストリアでは、30歳以上の女性の母乳についての検査をはじめるほどの深刻さであるが、日本においても、EU指令にならった早急なガイドラインの制定がのぞまれる。
(原文はhttp://www.mad-cow.org/00/mar01_news.html#fff参照)

(各国の献血/輸血問題とBSE/vCJDとの関連対応についてはhttp://www.bpro.or.jp/contents/japanese/pages/o_news.htmlを参照)

 

行政自らが風評を招いていると自覚すべき


第三は、完全な体制が整うまでは、安易な風評対策や安全宣言はだすべきではないということである。

も っとも有効な風評対策は、すべての情報を遅滞なくすべて公開すること、速やかで徹底した 検査体制を敷くこと、これによって被害をこうむる畜産農家や業界に対する補償助成措置を 速やかにこうじること、であろう。

二転三転した農林水産省発表こそが、もっとも消費者の食肉の安全性についての信頼を失わせた ことを、反省すべきである。

10月2日「牛肉を大いに食べる会」なるものが開催され、担当2閣僚が出席し、牛肉の安全性をPRしたという。(外電で流されたこの映像は国辱ものと私はおもうのだが)

ここでおもいだされるのは、先のNHKの狂牛病特集でも放送された、1990年5月16日の英国の農林大臣John Selwyn Gummer氏が行った、自らの娘も巻き添えにした、誤れる牛肉キャンペーンの失態である。

彼は、世紀に残りうる、この恥ずべき映像で、自らの先見性のなさを、世界に露呈させた。

そして、ほうれんそうや貝割れ大根と、狂牛病段階の食物連鎖からvCJD段階での血液連鎖へと移行しうる牛肉とをいっしょにとらえ、安全宣言してしまった、日本の二閣僚の姿もまた、日本発の恥ずべき映像として、今後世界に流し続けられるであろう。

 

スーパーはすでに狂牛病シフト完了


私は、この問題が本格化したのち、いくつかのスーパーの牛肉売り場をみてまわった。

スーパーは、すでに狂牛病対応済みのようで、

1.産地表示をしっかりさせている。特に直営牧場の場合は、それを強調。現在の疑いのある 産地県は、除外。

2.輸入肉は、オーストラリア産を強調。消費者もSSCのGBRアセスレベルを知っているのかも。

3.産地非表示のものは、大幅ディスカウント。中には、450円引きなどというのも。

こうしてみると、スーパーはすでに完全に狂牛病シフト完了のようだ。

生産者や農林水産省、農業団体も、その迅速さと危機管理を見習うべきである。

これに対し、零細小売店は、値下げも出来ず、産地証明もままならず、パニックの影響をまともに受けている感じである。

わずかに、子牛登記証明書を張り出し、防衛策につとめるのがせいぜいである。

これら、零細関連業界への助成策とドイツにならった公的機関による部位別安全認証マークの交付などの諸策を講じる必要がある。

さらに、以下に示すドイツの例に倣って、消費者に情報を提供し、生産から消費にいたるプロセスに参加していただくための諸策の充実につとめなければならない。

特に消費者センターについては、これら参加する消費者のための、より総合的情報の提供と実践の拠点とするための抜本的な改革と幅広い助成をすることが求められているとかんがえる。

イギリスのスーパーマーケットであるSainsbury's は、販売する肉製品すべてについて、2001/03/23より、BSEのテストをおこなっている。 (ここも参照)(ここも参照)

これはスイスの科学者との連携によるもので、今後、このような動きは、スーパー自衛の有力な手段として、わが国においても、拡大していくものとおもわれる。

今後、日本において何よりも必要なのは、消費者が食べる肉の出自を確認しうるトレーサビリティの確保である。

フランスでは、狂牛病の発生後から、このためにVBF制度の創設を行い、現在、これを豚にも拡大したVPF制度の創設に動いている

また、ドイツでは、以下の写真に見るように、州ごとにBSE-frei(free)の安全マークを表示している。(出典はカールスルーエ市の松田さんの「狂牛病パニック)

狂牛病に限らず、食品安全の観点から、消費者が食品の安全性を、食品流通の逆からたどりうるトレース・バック・システムの整備は、各国緊急の課題である。


狂牛病を超えて-BSEタスクフォースの設置を-


日本が狂牛病感染国となったことは、確かにショックなことには違いない。

しかし、この災いを転じて、プラスの方向に持っていく姿勢が、この際必要だ。

例えは悪いが、「病気持ちの長生き」を実現するために、「牛の口から人の口」(From the Farm to the Fork)にいたる、完全な管理体制(組織的にも一貫した管理体制)を、この際、実現することである。(参考-南アフリカの一貫体制 オーストラリアの食肉市場改革の動き)

ドイツの狂牛病パニックは、ドイツの農業政策の根幹の変革(Agrarwende)をもうながした。

次に上げるのは、消費者大臣兼農林大臣キュネスト氏が所属する2001年3月の緑の党連邦議員会議での決議である。

ここで、これまでの誤った食料生産・農業政策こそが狂牛病をひきおこしたものとして、次のような「自然にやさしく、消費者に身近な農業転換」を目指した。(参照−草壁聖一さんの「ヨーロッパのマスメディアが伝える狂牛病の真の姿と、その対応策」http://w2222.nsk.ne.jp/%7Eforelle/danger.html)

すなわち
 
1、草食動物を肉食動物にするような工業的農業からの脱却
2、抗生物質を多使用するような工業的農業からの脱却
3、生き物が使用財になるような工業的農業からの脱却
4、量から質への転換による消費者志向の農業への転換
5、大量飼育から、その種にふさわしい量の飼育への転換による消費者志向の農業への転換
6、自然資源多消費型でなく、土壌と水を保護する消費者志向の農業への転換

また、消費者保護政策として、「予防的消費者保護政策」が、うちだされようとしている。

その概要は下記のとおりである。

1 消費者の健康保護と安全
2 消費者の経済的利益の保護
3 消費者と生産者の機会の平等
4 製品の安全と高品質
5 市場の透明性改善および消費者への情報供与と教育

この5つの柱の元に、生産から消費にいたる全プロセスにおいて、消費者は市場の透明性、生産の透明性を把握しうる権利と、その権利確保のための情報の供与と教育を受けることが出来るというものである。

このプロセスにおいては、消費者は、単なる従来のような最終消費者ではなく、共に、このプロセスを全うしうる参加者としていちづけられる。 

かつて、「消費者は王様」という名はあっても、実質的には、このプロセスに参加するに十分な、権利も情報も得られない「裸の王様」であったのが、これまでの消費者の実態であった。

しかし、この「予防的消費者保護政策」においては、消費者は、生産から消費にいたる全プロセスに責任を持って立ち向かうパートナーとなるのである。

さらに、現在の製造者責任法(PL法)は、日本においてもEUにおいても、加工していない農林水産物は、その対象となっていないEUにおいては、加工していない農林水産物も対象にしようとしている。(日本におけるPL法にかかわる訴訟事例はhttp://www.shokusan.or.jp/business/pl/hoken6.htmlのとおり)

これにくわえて、ドイツでは、消費者情報法(Verbraucherinformationsgesetz)に、これを加える動きにある。

いずれの動きも、BSEに汚染された肉や、それを使った加工品の元を正しえない、消費者を救済しようとするための動きである。

もし、日本の農政が、今回のこの手痛い経験をプラスに生かすとすれば、今回のパニックを単に部分的に弥縫するだけの政策展開に終わることなく、以上のドイツの経験と政策にならった、新しい真の意味での持続可能型農業と予防的消費者保護政策実現への政策展開に、この際取り組むことであろう。

そして、さらにはBSEによって影響をうけるあらゆる分野のかたがた-特に消費者-を糾合した、BSE-Task-Forceの設置による、国民各界あげてのBSEの根絶のための国民運動を展開する必要がある。

そのことこそ、あるいは、これまでのBSEの見逃しによって、子孫に災いを残すかもしれないであろう、われわれ現世代のやりうる、最小限の義務である。

 

 

参考1 笹山登生の政策データベース「リンク集-日本の狂牛病対策」

参考2 科学雑誌「ネイチャー」9月27日号「日本の狂牛病対策批判記事」抄訳
日本の新聞でも話題となった記事です。
「Japan's beef scandal」という題名で、概要はつぎのとおり。全文はこちら

今回の狂牛病の発見によって、日本は、確実に、次はvCJDの発生問題に直面することとなる。
日本の政府の対応が遅いのは、この狂牛病問題に限ったことではない。
これまでにも、水俣病問題でも、HIV問題でも、同じだった。
いずれも、初期行動で、問題の多くは、かなり防げたはずだ。
日本政府は、今回の狂牛病問題についても、これまでの水俣問題・HIV問題の対応のパターンを踏襲しようとしている。
1990年代のはじめ、肉骨粉-MBM-は、不本意にも、日本をはじめとしたアジア諸国にばら撒かれた。
特に、インドネシアとタイへは、相当の量のMBMが輸出された。
この時期に、日本は、金はかかったであろうが、厳密な検査と厳格な規制をすべきであった。
この時期、日本は豊富な経済力をもって、狂牛病を防ぐシステムをいち早く確立し、他のアジア諸国にたいし、狂牛病阻止のモデルをしめすべきであった。
だが、それを日本はやらなかった。
実態は、まったく逆だった。
他のアジア諸国が、MBM利用への規制を厳しくしたのに、日本の規制は、相変わらず、ゆるやかなものであった。
今回、最初の狂牛病が発見されて、初めて、日本は、MBMへの規制を厳しくしたに過ぎない。
時すでにおそしである。
この間において、日本はEUのレポートが示す警告について、「科学的根拠がないこと」を理由として、初期段階にすべき行動を怠った。
これら日本政府の取ったかたくなな態度は、業界癒着の政府の体質にもとずくものである。
日本政府は、この際、EUがとっているような、偏向のない意見をもつべきである。
そうすれば、これから、日本の幾人かの市民に致命的な結果をもたらすであろう不適切な天命-vCJDの感染-が下されるのを、終わらせることが出来るであろう。






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