笹山登生の発言・寸感アラカルト



2001年7月25日 NHK プロジェクトX 挑戦者たち「白神山地 マタギの森の総力戦」 への異論


7月10日放送の番組NHK プロジェクトX 挑戦者たち「白神山地 マタギの森の総力戦」(平山さんという方がまとめられた番組ドキュメントがこのURLにあります。)に対し、青森県側の旧反対運動のかたがたから、このようなまたは、このような (下記参考資料1参照)異論が寄せられているという。

青森県の地元紙では、このような反論がかかれていたり、他の掲示板でも、このような意見が寄せられ、さらに中央の自然保護団体からも、このような抗議がでているようだ。放送業界内でも、このような話もあるようだ。NHK側は、この段になって、今後このような対応をすることを抗議側に約束したようだ。

反対運動の第一段階での主役と、ルート変更後の第二段階での主役を、NHK側が取り違えてしまったことが、問題の発端のようである。

さらにいえば、美しい自然を守るという意味での環境団体と、古来コモンズとして山を使いながら守ってきた人々とが、違った時期に違った視点から、結果として、ともに白神山地を守ったということに対する考察が不十分のまま、あたかも、両者が連携し取り組んだかのような、ステロタイプ化した企画志向による、感動的な演出とはなるが一面的な報道をしてしまったことが、原因のようにもおもえる。

番組では、「秋田県藤里町で写真店を営む鎌田孝一(50)さんが、山仲間とともに、林道建設の前にブナ原生林を一目みたいと、村でただ一人の老マタギ・佐々木伊一郎に案内を頼む。」として、後に13202通に上る異議意見書の署名活動の発端がこの二人にでもあるかのような書き出しに、青森県側の、特に青森県鯵ヶ沢町の赤石川流域住民の皆様方が、むっときたわけだ。

ちなみに、鎌田さんは秋田自然を守る友の会の会長で、1982年(S57) 5.19、秋田県に、「秋田県野鳥の会」とともに、青秋林道建設中止の要望書を提出している。

青森県側の自然保護団体や中央の環境団体も、これとは連動しない、それぞれ独自の動きを、ほぼ゛同時期からはじめている。
 
確かに、純粋の環境的視点から警鐘を鳴らした、多くの動きのなかの一つであったといえる。

(地図は熊本日日新聞より引用)

しかし、ポイントは、その後の青秋林道のルート変更にある。

青秋林道の秋田工区は当初、県境尾根づたいに通る予定だったが、秋田県の自然保護団体が、粕毛川流域のブナ林と粕毛川の水を守るため藤里町を通らないでほしい、と県に要望したのをうけ、1985年、鯵ケ沢町(二ツ森北側の赤石川源頭)を通るルートに変更した。

果たして、この時点で、秋田の自然保護団体は、どの程度のスコープで、白神山地の生態系を見ていたのか、私にはよくわからない。

秋田青森両県にまたがる白神山地とはいっても、その四分の三は、青森県側に属している。

マタギの縄張りから言えば、秋田県八森町も属する真瀬岳も、青森県の砂子瀬マタギのテリトリーである。

このルート変更で、白神山地の青秋林道問題は大きな転換点をむかえる。

1985年の秋田県側の青秋林道ルート変更で、玉突き衝突的に影響をこうむることになった赤石川流域では、 青森県側の赤石川源流部水源涵養保安林解除問題が発生し、これに赤石川流域住民が反対したことで、1987年青森県知事が建設の見直しを表明し、建設中止となった。

このことが、その後の林野庁の白神山地森林生態系保護地域指定と、その後の白神山地世界遺産指定への大きなきっかけとなったのである。

やや、アイロニカルにいえば、この秋田県側のルート変更がなかったならば、白神山地の世界遺産指定は無かったのかもしれない。

あるいは、青森県の赤石川流域住民サイドからみれば、秋田県側は世界遺産白神山地のフリーライダーだと感じないわけではないだろう。

要は、白神山地に対する人とのかかわりあいが、秋田側と青森側とではかなり違うということ、したがって、白神山地への考え方も、両者には、相当のずれがあったことだろう。

また、白神山地におけるクマゲラの発見についても、それは学術的経緯の中での発見であったことも、視聴者に伝えなければならなかったのではなかろうか。

鳥類学会において、長らく、「クマゲラは北海道のもの」との認識がつよかった。

その定説を打ち破ったのが、1934年(昭和9年)京都大学講師川口孫治郎先生による、秋田県八幡平での、クマゲラ2羽捕獲であった。

しかし、それのみでは、クマゲラは北海道よりの渡り鳥であるかもしれない。

その後、数十年のブランクをへて、1970年(昭和45年)地元の庄司国千代さんによって森吉山麓太平湖付近で再び発見、さらに1975年(昭和50年)、庄司さんらにより、オス一羽発見され、その3年後の1978(昭和53年)に森吉山で繁殖確認をしたのが、当時の秋田大学の学生である泉祐一さんであった

この時点で、本州に見られるクマゲラは、北海道からの渡り鳥ではないことが、実証されたのである。

その泉祐一さんが、その後、秋田県庁に勤め、1983年(昭和58年)に白神山地中核部の櫛石山南麓の赤石川流域でクマゲラを発見したのである。

つまり、泉さんがクマゲラを発見したのは、青森県側であったこと、しかも、泉さんには、県庁の職員としてとともに、クマゲラ発見への学術的動機があったであろうこと、すなわち、これまでのクマゲラ本州発見の実績を補強する意義も、強かったのではなかろうかということを、認識しなければならないということである。

NHKは、この微妙な両県の白神山地に対する住民の考え方のずれを、見逃し、秋田県側のルート変更が、結果、白神山地の利用に生計を大きく依存する赤石川流域住民の危機感をあおったということ、そして、それが大きく白神山地保全につながったという事実、さらに、入山規制についていだく両県地域住民の思惑がことなっていたこと、青森・秋田両県そして中央環境団体一体となって白神山地が守られたのだという基本認識を欠いていたことが、今回のトラブルの元になったのだと、私はおもう。

地域住民の林野利用という観点からいうと、秋田県側は地形の関係から林野利用が限られていたのにたいし、青森県側住民の林野利用はかなり進んでいたということ。

そのことが、入山規制についての反対が、青森県側に特に強かったということにつながったようだ。

入山規制が、直接生計にかかわる問題となったのは、青森県側であり、秋田県側の住民の考え方とは、その切実度が異なっていた、ともいえるのではないのだろうか。

この点に関しては、先にあげた秋田の鎌田孝一さんと青森の根深誠さんのあいだでも、意見の相違があるようだ。

ちなみに、中断された青秋林道の秋田県側はほとんど完成しており、最末端―秋田県側の二ツ森直下-は、この写真のように最後まで完全舗装されている。

これについては、赤石川からの入山のみが緩衝地域のはるか手前の林道入り口で禁止され、特定の人しか入れないこと、足下はきつく止めておいて、頭の秋田県側二ツ森には核心地域の目前まで立派な観光登山道路ができていることなどについて、怒りの声が、赤石川流域住民の間にある

いま、両県の間で、「緑の回廊」構想が練られているが、これも、単なる森林生態系の凍結的保存という観点では、マタギの精神を森林保護に生かすことはできないであろう。


ここでも、森をコモンズとして、使いながら守り育てるという、青森県がわのマタギの古来からの知恵に学ぶ必要がありそうだ。

環境を守るには、一人の英雄によるのではなく、それを取り巻くあらゆる総合力の成果が、白神山地のような世界に冠たる環境資産を守るのだということを、この機会に、ともども認識したいものだ。



参考資料その1

東北自然保護団体連絡会議のHPより転載させていただきました。


NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」
〜奇跡のブナ林・攻防2000日    への質問状

日本自然保護協会のNHKへの質問状はこれです。プロジェクトXの問題点が今明らかに!


  当サイトにも多くの方から  NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」に感動した。偏った構成だなどの感想が寄せられました。
  この番組には、明らかな間違いがあるのは事実です。多くの人々に影響を与える番組なだけに、誤りは誤りとして訂正する機会を作られることを切に願います。
  日本自然保護協会から、以下の質問状がNHKに送られました。この質問項目をご覧の上、当サイトで情報をご確認ください。
この件に関してのお問い合わせは、日本自然保護協会nacsj@or.jpへとのことです。

2001年7月26日
日本放送協会
   番組制作局長 殿
(財)日本自然保護協会
吉田正人(常務理事)
横山隆一(常務理事)
拝啓
2001年7月10日に放送された、「プロジェクトX 白神山地・マタギの森の総力戦」を拝見しました。
この番組に対しては、青秋林道・奥赤石川林道の停止・中止に尽力した地元団体から抗議の声が上がっているとの報道も先日ありましたが、白神山地のブナ原生林の保護、二つの林道問題の解決と森林生態系保護地域の設定、自然環境保全地域および世界自然遺産地域の指定などに直接関わってきた当協会としても、番組における事実関係の誤認、重要な事実の不適切な割愛を指摘せざるを得ません。また、その結果として白神山地の保護に関わってきた個人・団体に関して、きわめて偏った評価及び認識が社会的になされたことをたいへん遺憾に思います。
これまでの白神山地の保護活動の中では、諸処の事情から各活動団体・個人間の関係が悪化するということが多々ありましたが、これに対し、東北地方の自然保護団体が3年がかりの会合を通じて関係修復に努め、再度団体間の信頼関係を培いつつありました。しかしこの番組の放送のためにその努力は一瞬にして無に帰してしまいました。
この番組が、白神山地の保護活動に関して入念な取材による事実確認を怠り、事実とはかなり異なる因果関係や印象を全国に伝え、その結果として、白神山地の自然保護にかかわった個人・団体間の信頼関係も崩したことは、公共の電波を使用する放送局として許されないことと考えます。
ついては、下記の点について貴職の見解を伺うとともに、きちんとした取材に基づいて、白神山地の自然保護活動の実際の経緯を的確に伝え直す新たな方策を検討するとともに、この番組のビデオ販売については中止することをここに求めます。
敬具
 
1  白神山地のブナ林が、1970年代の東北地方のブナ林保護運動にはじまり、1985年・国際森林年の秋田でのブナシンポジウムを契機として、青森・秋田両県の自然保護団体のみならず、東北地方ならびに全国各地の自然保護団体の支持と協力によって、林野庁の自然林保護政策を転換した結果として保護されたという視点が全くみられないのはなぜか。
2  白神山地のブナ林が、当協会のブナ原生林保護基金によせられた寄付金や1987年の1300通を越す保安林解除への異議意見書などにみられるように、全国の一般の人々の協力と支持によっても保護されたという視点が全く見られないのはなぜか。
3  映像として出された、自然保護議員連盟幹事長の岩垂寿喜男元衆議院議員の林道視察は、当協会からの調査要請もあって林道計画の見直しを目的に行われたにもかかわらず、林道推進の国会議員が次々と林道を訪れたというようなナレーションになっているが、これはなぜか。
4  白神山地のブナ林への脅威は、青秋林道及び奥赤石川林道の2つの林道計画とその後の森林伐採であり、これらに反対する活動は、秋田・青森両県で独立して発足・発展した。最終的には青森県側の住民の保安林解除に対する異議意見書の数の多さが、北村青森県知事の林道中止判断に大きな影響を与えたという基本的事実に関する視点が無く、むしろ秋田県側の自然保護団体の発案や指示によって青森県側の自然保護団体が動いたかのように解説されたが、これはなぜか。
5  異議意見書に関する対処方針は、当協会が意見書提出の手続き等を調査し、秋田、青森両県の自然保護団体に伝えたものである。しかし番組では、秋田県側から青森県側に作戦が伝えられ行われたとされているが、これはなぜか。
6  当協会は、1990年に世界遺産条約の早期批准と白神山地の自然遺産登録を求める意見書を内閣総理大臣に送り、これが契機となって白神山地の自然遺産登録が実現した経緯があるが、これらを一切省略した理由は何か。
以上
 
〒102-0075東京都千代田区三番町5-24 山路三番町ビル3F(財)日本自然保護協会
TEL 03-3265-0523 FAX 03-3265-0527
 MP 090-7238-8381 吉田正人
横山隆一 yokoyama@nacsj.or.jp

合わせて、日本自然保護協会から以下の主旨の連絡がありました。

NHK番組制作局長あてに送付した質問状に対して、番組制作局社会情報番組担当部長が、日本自然保護協会を訪れた。

・NACS-Jから指摘された6つの事項については、NHKに誤りがあったことを認めた。
本局(NHK)には当時の白神山地問題を知る人がいながら、事実関係をチェックできなかったことも反省しなければならないと認識している。
運動にかかわったこられた方々から批判を浴びる事態になり、NHKとしては重大な問題と受け止めている。

・要望事項のうち、ビデオ、出版物については中止を検討している。
また正しい事実の報道については、今年秋頃までには、事実にもとづいた全国放送の番組を作る計画であるので、もう一度チャンスを与えて欲しい。



問題の所在を明らかにするため、あえて以下の部分につきましても、転載させていただきます。


NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」
〜奇跡のブナ林・攻防2000日    の誤りと問題点


  NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」の問題点は何かを考えてみたいと思います。
    この番組には、明らかな間違いがあるのは事実です。多くの人々に影響を与える番組なだけに、誤りは誤りとして訂正する機会を作られることを切に願います。
  日本自然保護協会から、質問状がNHKに送られました。併せてご確認ください。

NHKホームページからの番組紹介

NHK プロジェクトX 挑戦者
http://www.nhk.or.jp/projectx/library/library.html

NHKのサイトでは、このような番組案内を掲載していました。
(番組紹介のサイトには、番組でまったく触れられていない青森県西目屋村のマタギの工藤さんの写真が貼られています。それから、以下の番組案内よりも平山さんの要約の方がよいようです。)

第60回 平成13年7月10日放送
「白神山地 マタギの森の総力戦」


 世界遺産にも選ばれた、世界有数のブナ原生林が生い茂る白神山地。古くから「マタギ」と呼ばれる山の民が、森とともに生きていた場所でもある。
 そのマタギの森が、今から20年前、崩壊の危機に瀕した。
 昭和57年、秋田県、青森県、林野庁が、白神山地を横断する巨大林道の建設を始めたのである。
 地元、秋田県藤里町で写真店を営む鎌田孝一、50歳。計画を知った鎌田は、山仲間とともに、林道建設の前にブナ原生林を一目見たいと、村でただ一人の老マタギ、佐々木伊一郎に案内を頼む。老マタギにつれられ、原生林にふみいった鎌田は、その壮大な自然に圧倒された。老マタギは鎌田に言った。「森は一度死んだらよみがえらない」。鎌田は山の仲間とともに林道建設の反対を訴える運動を開始する。
 鎌田たちの上げた声に、様々な人たちが呼応する。林道建設を推進する県庁の職員までが  密かに反対運動に参加した。しかし、すでに、動き出している林道建設を途中で止めることは難しかった。
 行き詰まる中で鎌田の心の支えの老マタギ、佐々木が、がんで倒れる。最後の言葉は「もう一度、一緒に森に行こう」
 人々は、最後に、望みをかけ、一万人を超える署名に挑む。しかし、そこには、思わぬ困難が待ちうけていた。それを乗り越えるため取った最後の秘策とは…。
 「マタギの森」を守るため、全ての情熱を傾けた人々の感動のドラマを描く。

ある掲示板に番組の要約が掲載されていました。

お名前:平山
題 名:白神山地  −マタギの森の総力戦−

NHK見られなかった人のために要約してみました。
(だいたい、こんな内容だったと思う。誤りがあったらごめん)

白神山地に巻き起こった19年前の危機。

そして、それを回避することができたきっかけとは。

それは、昭和35年 高度経済成長の時代に遡る。
写真展を経営する鎌田夫妻が白神山地のふもとに引っ越してきた。
婦人は病気を患っていた。いつも夫とともに森の入り口までいき
夫の山行を見送った。
夫は山登りと写真が趣味。妻のために植物などの写真を撮っては
見せて喜ばせていた。

20年がたった。
鎌田は50になっていた。
8人の山仲間ができた。

まだ見ぬ白神の原生林に行きたい。
マタギの佐々木頭領(70)に案内を頼む。
仲間とともに分け入っていく。

佐々木は言う。
この森は天然の水瓶だ。一年を通じて絶えることが無い。
鎌田は山の神に祈りを捧げる佐々木とマタギたちの自然観に感銘を受ける。

そのころ、林野庁、秋田・青森両県が白神山地伐採計画を立てていた。
環境調査報告には、こう記載された。
この地には守るべき動植物は存在しない。

国会議員などが視察し、経済効果などをピーアールした。
地元は過疎から脱却できると沸き立ち、一気に開発計画は加速した。

鎌田孝一たちは反対運動を展開した。
工事業者、隣町の町長など、さまざまなところから脅し、圧力をかけてきた。
鎌田と運動をともにしていた根深誠は理不尽にも食品会社を首にさせられた。
メンバーは次々と脱落していくものも出てきた。

マタギの吉川隆は白神の奥のぶなの木にシールが貼られているのに疑問を抱く。
それは伐採の目印であった。

秋田県職員泉祐一が熊ゲラを発見。
この森は普通の森ではないことを知る。

ふもとは景気に沸いていた。
ぶなの伐採と、林道工事への雇用で地元は潤った。

まもなくマタギの頭領佐々木が倒れる。
吉川が頭領を継ぐ。

泉が秘策を鎌田に授ける。
30日以内に反対署名を集め、県へ提出せよ。

鎌田たちは吉川に力を求めた。
フリーの根深が賛成派からの矢面に立って陣頭指揮を執ることを名乗り出た。
マタギたちが山を降りてきた。
赤石川の漁師石岡たちも住民集会に出かけ、ぶなを切るなと呼びかけた。
次第に署名は集まってきた。

県へ提出した署名は1万数千通を超えた。
県の担当者は驚いた。即刻工事は中止となり、白神核心部の伐採は免れた。

平成5年、スイスの学者が白神を訪れ、豊かな森に感銘を受けた。
翌年、白神は世界遺産に登録された。

番組の問題点を明らかにする。

   白神山地を守ろうという、青秋林道建設反対運動は10年以上の歳月がかかっています。それを45分程度の番組にするのは難しいとともに、「プロジェクトX」という番組そのものが、あるチームのリーダーにスポットを当てるという構成なために、無理に無理を重ねての作りとなったと感じられました。
  脚色が多く、「どこまでが事実でどこからが脚色なのかがわからない。」という思いです。プロジェクトXは多くの番組ランイナップを抱えています。とすれば、他の番組は大丈夫なのだろうか...。他にも、同様なことがあったのではなかろうかと考えるのが普通でしょう。
   (いい番組だったと誉める人もいます。私も事実を知らなければ感動したと思うのですが....)
 
  回想番組ですから、写真を写し出しそれに語らせるという構成で進んでいきます。
まず、初めに8人の仲間ができた。鎌田孝一さんの「秋田自然を守る友の会」の方々を中心とした人たちでしょう。(?)
  次に30人のプロジェクトチームができたと番組では紹介してします。その中に青森県側で運動を斗った人々の写真が交じりました。「何を持って30人なのか」は分かりませんが、この白神山地を守る運動は、青森県側と秋田県はなんの打ち合わせもなく、同時発生しているのです。それを「30人のプロジェクトチーム」とくくるという感性が理解できません。まるで一つの団体と視聴者が受け取るのが普通でしょう。または、鎌田さんの運動が青森側にも広まったと受け取ることでしょう。(この時点では視聴者は気づいていませんが。)

   写真店を経営している鎌田さんに、「工事現場写真」の現像プリントの依頼が来なくなり、仕事が半減したというのはそのとおりです。次に構成された根深誠さんが「会社をクビになった。」のもそのとおりなのですが、根深さんが青森県弘前の人だということはその時点でまったくふれられませんでした。
   マタギを語る場面でも、同様の手法です。引用されていただいた平山さんの要約の中に「まもなくマタギの頭領佐々木が倒れる。吉川(隆)が頭領を継ぐ。」とあります。事情のわからない方がそのように取る構成をしているということです。吉川さんは鰺ヶ沢一ツ森部落のマダギのシカリ(棟梁)の孫にあたる方です。佐々木伊一郎さんは、秋田県の方ですから、まったく関連がないのです。
(吉川さんは、この番組の流れを東京のNHKスタジオで初めて知り、「話が違う」として出演を拒んだという話を伝え聞いています。)

  青秋林道建設計画を直接的に白紙に追い込んだのは、1万3千通の異議意見書だったのは論を待たない事実です。
   その案は秋田県庁の泉祐一さんが考えついて、鎌田さんに教示したというくだりは、何を持ってそんなウソがつけるのだろうという程の誤りです。彼はそんなことをNHKに言うはずがありません。泉さんは本当に打撃を受けられたと思います。この異議意見書提出のプランは「日本自然保護協会」から、もうこれしかないとして出されたものです。当然ながら、青森県側、秋田側の運動者に同時に提示されていますから、秋田県側の話に青森が乗ったということではありません。

   「プロジャクトチームの集まりの中で、皆はたして1カ月で2000もの署名が集まるのだろうかと苦汁している時に、根深さんが立ち上がって私が先頭に立つ」と発言したというくだりも、はたして実際にあったことなのでしょうか。
  1万3千通もの「水源かん養保安林解除に係る異議意見書」も、多くは日本全国から寄せられたという事実も切り捨てています。

   このように、この番組は初めに番組構成の骨を作り、それに作者が意図的に(視聴者が勘違いすることを承知の上で、また作者はその事実を知りながら)貼り付けていくという手法で作られています。ドラマならいざしも、ドキュメントを売り物のシリーズなだけに許されないと言わなくてはなりません。
  私は放映時には番組を見ておりませんでした。
   「たいして調べもせずに、番組を作ってしまったんだろうな。日本自然保護協会にでも、見せればよかったのにと軽く考えていました。」
    しかし、番組の録画を見て、意図的なものを感ぜずにはいられませんでした。番組製作者の作意が事実をねじ曲げてしまっている、そのため、もっと素晴らしい感動の物語を矮小化してしまったと思えてなりません。

   NHKプロジェクトX、「白神山地・マタギの森の総力戦」〜奇跡のブナ林・攻防2000日は、番組の本は出版することもビデオを出すことも取り止めるとNHKは発表しています。一過性の番組の誤りを固定化する愚挙だけはストップされました。
   このプロジェクトX事件により、「また青森と秋田(の自然保護団体)が...」などと、いう声も聞かれないわけではありません。しかし、関係者が番組の誤りを正さなければ、真実を報道するというジャーナリズムが犯された記録物や媒体が日本中にばらまかれたことでしょう。
   それは、番組としてよければそれでいいというものではない、「全国の白神を守れ!と当時叫んでくれた人々」と「白神山地が世界に誇るべき遺産と今思ってくれている人々」の思いを踏みにじる結果となったに違いありません。

   この番組に対する批判が、けっして「鎌田孝一さん」に向けられませんように。鎌田さんがいなければ、たとえ青秋連動が開通しなかったとしても、白神の峰は林道で分断されてしまっていたことでしょう。



参考資料その2

「緑の回廊」設定へ/東北森林管理局、白神山地と八甲田を結ぶ

(2001-07-10)東北森林管理局と同青森分局は、野生動植物の移動経路の確保を目的とした「緑の回廊」を、新たに八甲田・十和田湖周辺から白神山地に至る地域に設定する方針を固め、9日、秋田市中通の同局で初の設定委員会を開いた。委員会では、林業や自然保護団体関係者、学識者ら16人が、回廊設定に当たっての基本姿勢について意見を交わした。

 「緑の回廊」は野生動植物の生息・生育地の拡大を図る目的で、全国の森林管理局が11年から検討を進めている。回廊に設定されると、区域内での開発は動物の移動に支障がない範囲で行うことが求められる。東北では12年、八甲田から蔵王までに点在する保護林10カ所を結ぶ「奥羽山脈緑の回廊」が設定された。

 今回新たに検討されるのは、八甲田山森林生物遺伝資源保存林を起点に、秋田・青森県境に沿って白神山地森林生態系保護地域に至る区域。標高700―1000メートル前後の山が連なり、特に秋田県側の米代川流域では林業活動が盛ん。設定に当たって同局は、こうした生産現場としての森林の取り扱いを課題としている。

 この日は同局が「緑の回廊」の目的や設定方針、これまでの設定事例などを説明。これらを踏まえて委員からは「生態系保護の観点に立てば、設定区域内での生産活動はやめるべきではないのか」「人工林でも、人と動植物の共存が図られてきている。あえて人工林を減らす必要はない」など、自然との共生の観点に立った意見が出された。

 同局ではこの日の検討内容をもとに、設定方針案を作成。委員による現地検討会なども行い、10月にも具体的な設定区域を取りまとめたいとしている。

参考資料その3


入山規制問題については下記のリンクを参照のこと

http://www.jomon.ne.jp/~misago/kakusintiiki.html

http://www.jomon.ne.jp/~misago/neuzankisei.html

http://www.toonippo.co.jp/kikaku/shirakami/kiji.html

http://www.asahi-net.or.jp/~jf3t-sgwr/sirakamihogo/iken.htm

http://www.jomon.ne.jp/~hsikanai/sizenhogo.html

http://www.infoaomori.ne.jp/~nagainpo/rekisi.html

http://www.jomon.ne.jp/~misago/s_yobo00.html

http://www.media-akita.or.jp/akita-shirakami/history.html

http://www.jomon.ne.jp/~misago/archive.html


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