笹山登生の雑感&情報の日記

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2004年8月7日(土) 「プリオン蛋白遺伝子(PRNP)のコドン129に異型遺伝子をもつ患者における輸血後の未発症vCJD」とのLancet論文の仮訳

以下は、2004年8月7日付けでLancetに発表された記事”Preclinical vCJD after blood transfusion in a PRNP codon 129 heterozygous patient  by Alexander H Peden, Mark W Head, Diane L Ritchie, Jeanne E Bell, James W Ironside ” の仮訳である。

後にvCJDに罹患した患者から、輸血を受けた後、5年後に非神経障害で死亡した発症前vCJD患者について、われわれは、報告する。
プリオターゼ耐性蛋白(PrPres)が、ウェスタン・ブロット法と、パラフィン包埋組織切片染色法と、免疫組織化学手法とによって、患者の脾臓から、検出されたが、脳からは検出されなかった。
プリオンたんぱく質の免疫組織化学手法によれば、頚部リンパ節でも、陽性であった。
この患者は、プリオン蛋白遺伝子(PRNP)のコドン129が、異型遺伝子であった。
このことは、vCJD感染に対し感受性があるとされるプリオン蛋白遺伝子のタイブが、メチニオン同型遺伝子に限定されないことを意味する。
これらの発見は、英国におけるvCJD発生の将来予測やサーベイランスのあり方に、大きな影響を与えるものである。
2003年に、英国で、年配の患者が、vCJDと診断されたが、この患者は、献血後にvCJDに罹患した患者から、白血球除去などの処理を行わない赤血球を輸血されたことによって、感染したものと思われる。
同様の調査は、2003年12月に生存していた17人についても、報告されている。
これらの人々は、後にvCJDに罹患した献血者から、不安定な血液成分を受けていた人々である。
このグループの一人に、輸血によって感染したと思われる、未発症vCJD感染例を剖検によって発見されたことを、われわれは、報告する。
1999年に、年配の患者が、献血後18ヶ月後にvCJDの兆候を示した献血者から、1ユニットの白血球除去等の処理をしない赤血球の輸血を受けた。
この献血者は、2001年に死亡し、vCJDは、剖検で確認された。
このとき輸血を受けた人は、輸血後5年後に死亡したが、神経障害は、なかった。
剖検についての法医学上の命令が下された。
直接の死因は、腹部大動脈瘤破裂であった。
われわれは、この患者の年齢・性別・住所地などの開示については、法医学上の制約を受けている。
われわれは、凍結した脳・脊髄・背根神経節・リンパ系組織・筋肉について、プリオターゼ耐性蛋白(PrPres)の存在を、ウエスタン・ブロット法によって、リンタングステン酸性降下物と3F4モノクローナル抗体で確かめた。
広い範囲から採取した組織を、蛋白質分解酵素で処理し、これについて、免疫組織化学手法とパラフィン包埋組織切片染色法を使って、プリオンたんぱく質のさまざまな抗原決定基に抗する4つのパネル抗体についての検査がなされた。
凍結された脳の検体について、制限酵素切断片長多型DNA解析をし、患者のプリオン蛋白遺伝子のコドン129が、MV型であると確認された。
プリオン蛋白遺伝子の全部の配列解析の承認は、得られなかった。
ウエスタン・ブロット分析によって、脾臓に、プリオターゼ耐性蛋白(PrPres)の存在が、見られた。
脾臓におけるシグナルの可動性と糖化率は、発症したvCJD患者の脾臓に見られたものと似ており、また、vCJDでない人の脾臓にvCJDの脳を希釈したものに見られたものと似ていた。
そして、それは、通常、比較的に長い臨床的疾患とされる弧発型vCJDの一部で説明されたものとは異なるものであった。
われわれは、vCJDをもった患者から、剖検により得た4つの脾臓見本について、この方法を適用した結果、プリオターゼ耐性蛋白が陽性であったということが、一貫して見られた特徴であった。
しかし、CJDを持たない対象からえた、一連の9の脾臓には、プリオターゼ耐性蛋白は、なかった。(データがみられなかった。)
1337グラムの脳には、単に加齢による変化が見られただけであった。
そこには、vCJDの病理学的特徴を示す、何者もなかった。
プリオターゼ耐性蛋白は、ウェスタン・ブロット法によっても、パラフィン包埋組織切片染色法によっても、免疫組織化学手法によっても、脳からも脊髄からも、検出されなかった。
プリオターゼ耐性蛋白の免疫染色は、脾臓の中のいくつかの胚中心に見られ、そのパターンは、小胞棒状細胞の染色と一致していた。
陽性の小胞の数は、vCJDの臨床例でのものより、はるかに少なく、免疫染色の塊状蓄積は少ないものであった。
プリオンたんぱく質の免疫染色は、頚部リンパ節の中の胚中心にもみられ、これも、脾臓で見られた陽性のパターンと同様のものであった。
プリオターゼ耐性蛋白は、ウェスタン・ブロット法では、扁桃腺や他の頚部リンパ節、背根神経節、筋肉のいずれのサンプルからも、検出されなかった。
すなわち、扁桃腺や虫垂や大腸の中のリンパ濾胞には、免疫組織化学手法によっては、いずれも、検出されなかった。
これは、英国において、剖検によって発症前のvCJDが検出された始めての記録である。
われわれは、以前、vCJDの始まりから2年8ヶ月前に虫垂切除を受けた二人の患者から採取した虫垂組織の中の胚中心に、未発症のプリオン蛋白遺伝子の免疫染色を見たことがある。
今回のケースにおける脾臓と頚部リンパ節の中でのプリオン蛋白遺伝子の蓄積のパターンは、これまでの多くの匿名の遡及的研究にみる限り、外科的に取り除いた三つの虫垂に見られたものと似ており、このことは、これらの発見もまた、発症前vCJD感染をあらわしているであろうことを意味している。
われわれの発見は、また、プリオン蛋白遺伝子のコドン129の遺伝子を持つ人について、プリオターゼ耐性蛋白のウェスタン・ブロット法による検出によって、vCJD感染が確認できることをも、あらわしている。
この発見は、イギリスにおけるvCJD発症数の将来予測に対し、大きな影響を与える。
なぜならば、この遺伝子型は、イギリスの人口のもっとも多い遺伝子グループを占めているからである。
この遺伝子グループは、BSE媒介物による一次感染や、輸血による二次感染によって、曝露した後に、異なる潜伏期間を持っていたものと見られる。
なぜ、これまで、この遺伝子グループについては、vCJDの臨床例がなかったのか、その謎が、この長い潜伏期間によって説明できるだろう。
このような未発症のケースは、また、脳において伝染力がない場合であっても、献血や、リンパ組織への接触状態にある外科手術器具の汚染などによって、それ自体、医原性の感染源となってしまうことをもあらわしている。
この患者は、イギリス在住であり、したがって、BSE媒介物への食事の上での曝露があったものと見られる。
しかし、最初に報告されたケースにおいては、vCJDを持つ献血者からの、血液の第二の受け取り人において、輸血による感染がないばあいのvCJD感染の可能性は、一万五千分の一から、三万分の一にかけて以上という、きわめてありえないケースであるに違いない。
この研究において、ネガティブコントロール(陰性を示すことが、あらかじめ分かっている検体)として選ばれた9人の患者のなかで、CJDのない患者のうち、プリオターゼ耐性蛋白が検出されたものは、いなかった。
そして、以前の研究において、われわれは、その他の研究者たちも、ヒトの他の形のプリオン病をもっている56のケースと、非CJDの85のケースについてみても、リンパ系組織にプリオンたんぱく質の蓄積を検出できなかった。
この場合における脾臓や頚部リンパ節(しかし、扁桃腺や腸管関連リンパ系組織にはない)にプリオターゼ耐性蛋白が限定してあるということは、経口による曝露よりは、静脈内の曝露と、一致している。
プリオン蛋白遺伝子のコドン129遺伝子タイブが、組織の中のプリオターゼ耐性蛋白の分布に影響を及ぼしているに違いない。
今回のケースは、イギリスにおいて、vCJDのサーベイランスを続けていくことの必要性を強くするとともに、また、ヒトのプリオン病の発症と未発症のいずれの場合においても、調査と診断のため、剖検の役割を強化する必要性を強くした。−以上-

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2004年8月12日(木) 原油需要はより高まるとの予測

本日のニューヨークタイムズ紙のJad Mouawad氏の記事 Demand for crude is forecast to surge http://www.iht.com/articles/533647.htmlは、原価の石油情勢について、コンパクトに伝えている。
以下は、その概訳である。

世界の石油需要は、2004年から2005年にかけて、当初予測していたものよりも、高まるであろうし、石油価格高騰にあわせ、石油産油国が、増産体制を取ることは、世界経済の回復を損なうものであるとの予測を、パリに本拠地のあるIEAがしている。
イラクでの石油供給の混乱、ロシアのトップ生産者であるYukoの行く末についての先行き不安、中国での原油需要の高まり、これらが、近時の原油価格を押し上げる要因となっている。
しかし、今週の水曜日に発表されたIEAレポートでは、サウジアラビアやロシアが増産体制にはいったことを指摘し、石油供給減少への懸念払拭に努めている。
「石油市場はタイトであり、生産余力は、予期していたよりも少なく、不確実性が、石油市場に重くのしかっている。」と、報告書は述べた後、「しかし、これで、石油価格45ドル相場を適正とするのであろうか?現在の原油価格は、懸念材料であり、経済的なダメージを誘発するものである。」と、述べている。
石油市場の神経過敏さを沈めようとする努力のなかで、世界最大の石油輸出国サウジアラビアは、今週の水曜日、石油需要にこたえるための百三十万バーレルの石油生産遊休施設があると、発表した。
エネルギー機関によれば、現在、サウジアラビアは、日産九百五十万バーレルの生産をしている。
「サウジアラビア政府としては、もし、世界の石油会社に、石油追加需要があるとすれば、即座に必要に応じて稼動に入れる遊休設備日産百三十万バーレル分を、世界の石油会社に振り向けることができる。」と、アル・アリ・ナイミ石油相は、サウジ報道機関に対する声明で発表した。
「サウジアラビアは、現在、石油市場の動揺を鎮めるよう、努力しており、必要バーレル確保の体制に入っているといわれている。これは、歓迎すべきことだ。」と、ニューヨークを根拠地とする石油産業研究財団の理事長であるローレンス・ゴールドスタイン氏は言う。
ニューヨークでは、水曜日、9月期先物原油引渡価格は、28セント上昇し、44.80ドルにまで上昇した。
契約ベースでは、37パーセント上昇し、火曜日には、44.80ドルを記録した。
この記録的な高価格は、先物取引がニューヨークで1983年に始まって以来の高価格である。
このサウジアラビアの声明は、アメリカエネルギー情報局のレポートと、同時になされた。
このレポートでは、アメリカの石油株は、先週、輸入の縮小によって、予想に反して下落し、ガソリン株も、下落したと、報じた。
IAEでは、2004年での世界の石油需要量を、日産八千二百二十万バーレルと見ており、2005年には、日産八千四百万バーレルと見ている。
これは、先の見通しよりも、日産七十三万バーレル増えている。
IAEの新しい数字を見ると、以前に予測していた数字が、需要を過小評価していたものと、判断せざるを得ないと、記者よりの電話取材でIAEの月次石油市場レポートの作成者であるクラウス・レハーグ氏は、語った。
IAEでは、石油需要は、今年二百五十万バーレルという記録的増加を見た後は、2005年には、百八十万バーレル増加するであろうと見ている。
「世界経済に回復基調に影響され、世界の石油需要が強く、上昇しつつあることを、IAEは、ついに認めざるを得ない。」と、ゴールドスタイン氏は、言う。
中国からの石油需要は、2003年後半から、焼け付くような相場展開で、これまできたが、今年の後半には、減速するであろう。」と、IEAはいう。
その理由は、中国が、経済の過熱を防ぐための実効ある措置をとるであろうからと、IEAのレポートでは言っている。
世界の石油の三分の一を握るOPECでは、ほぼフル生産体制にある。
IEAは、OPEC内における実効ある設備余力は、日産五十万バーレルまでダウンしていることが分かった。
この見積もりには、内乱やストライキ、国内不安などによって生産能力を上げられない、イラクやヴェネヅェーラ、ナイジェリア、インドネシアなどは、含まれていない。
OPECのトータルの設備余力は、IEAによると、日産百二十万バーレルである。
この設備余力は、通常需要が増大したときに生産をアップさせるのが普通であるが、2003年2月以来は、日産二百万バーレル以下に推移している。
2002年中は、OPECは、日産七百万バーレル程度をあてにしていた。
「私は、基本的には、もはや設備余力は残っていないと思います、」と、ロンドンを本拠地とするドイツ銀行の世界石油戦略家のアダム・ジーミンスキー氏は、言う。
「もし、世界のどこかで、ちょっとした問題が発生すれば、石油価格は、たちまち、50ドル以上上がってしまうでしょう。」と、アダム・ジーミンスキー氏はいう。
石油取引業者たちは、メジャー産油国からもたらされる、しばし、つじつまの合わないニュースに、踊らされている。。
Yukosは、世界の石油の2パーセントを生産しており、また、脱税疑惑で捜査中の会社であるが、ここは、先月、生産を閉鎖するであろうと、警告されていた。
その一時間後、その情報は、ロシア当局によって、否定された。
イラクでは、イラク北部のトルコを経由するパイプラインが、とまっており、攻撃が警告された後、火曜日には、ガルフ湾経由のタンカー輸送も、政府は、取りやめた。
OPECは、この6月のベイルートでの会議の後、生産最大限の天井を、それまでの二倍にした。
しかし、OPECの経常生産高は、OPECが通常象徴的な目標としている日産二千六百万バーレルよりも、高い水準にある。
OPECの11のメンバーは、先月、平均して、日産二千九百十万バーレルを生産した。
武装した暴動者によって生産設備が破壊されたイラクを除いては、7月のOPECの生産は、日産二千七百十万バーレルであり、前月対比、日産十四万五千ババーレル、アップした。
OPECグループは、9月15日に、ウイーンで会議がもたれる予定である。
しかし、アナリストたちが言うに、この会議は、あまり、石油価格ダウンに寄与するようなものではないという。
一方、供給のほうは、7月には、入荷が一杯になり、日産五十五万バーレルあがって、日産八千三百五十万バーレルに達しようとしていると、IEAはいっている。
今年の年末までには、より多くの石油が市場に入ってくることになり、それには、北海などの非OPEC生産国からの追加日産百二十万バーレルや、OPEC諸国からの日産四十万バーレルなどを含むことになる。
IEAは、30年前に、アラブ石油貿易禁止後に設立されたメジャーオイルの消費国からなる独立機関であるが、次のような指摘をしている。
すなわち、工業国は、緊急備蓄用の多量の石油を持っている。
IEA加盟国は、利用可能な戦略的備蓄分として、百四十万バーレル以上を持つ必要があると、報告している。
戦略的備蓄石油は、イラクがクエートに侵略した1991年以来、口をあけてはいない。

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2004年8月21日(土) 「今回のオイルショックは、形を変えた景気刺激になりうる」との、今日のニューヨークタイムズの記事

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本日(2004/08/21)のニューヨークタイムズの記事”An Oil Shock That Could Be an Economic Stimulus in Disguise”By EDUARDO PORTERの仮訳です。

原油高は、どこまで進むのだろうか?
この30年間に、アメリカは三回の原油価格の急騰を経験した。
この二週間の間に、原油価格の高騰が押し寄せてき、連日、高値を更新してくるに及び、あるエコノミストは、オイルショックがアメリカの経済拡張に対し、再び、ブレーキをかけることになるのではないかと心配し始めている。
おそらく、それは、杞憂であろう。
1970年代1980年代1990年代のオイルショックとの不気味な一致にもかかわらず、現在の原油高のアメリカ経済に与えているインパクトは、概して、以前のオイルショックのものとは、異なるものを持っているように見える。
それは、省エネルギー経済の浸透によるガソリン価格の安定によるのみならず、さらに重要なのは、過去のオイルショックの時と異なり、インフレへの制御体制が出来上がっていることによるものである。
金利を上げたり、景気停滞を招いたりするというよりは、エネルギー価格の高騰が、金利上昇を鈍化させるという意味で、一方での予期しない、ちょっとした景気刺激の要因ともなっているのである。
「過去のオイルショックは、経済にワンツーパンチを浴びせるようなものでした。」と、レーマン・ブラザーズのチーフ・エコノミストであるエサン・ハリス氏は言う。
「今回のオイルショックは、これまでとは違い、経済にとっては、軽いジャブ程度のものとなるでしょう。」と氏はいう。
原油価格の高騰は、今年の5月ごろに始まり、それは、世界経済の原油需要に高まりによって加速され、さらに、原油供給側の事情についての懸念−イラクの政情不安、ロシアやヴェネズェラなどの不安定要因-によって、一層加速した。
6月に原油価格がいくらか下落したものの、7月には、再び、上昇に転じ、今週のニューヨーク商品取引所におけるベンチマーク原油の契約が一バーレル50ドルになんなんとするに及び、まさに警戒警報が鳴り出した。
しかし、9月期引渡し価格は、昨日84セント下落し、47.86ドルとなった。
まちがいなく、最近の原油価格は、経済に痛みを与えるものであろう。
ガソリン価格の高騰は、この3年間の経済成長のけん引役であった消費者支出に陰を落とした。
オイルがより高くなるにつれ、中国のようなエネルギー多消費型アジア経済への障害となり、アメリカからの輸出減につながってしまう。
エネルギー価格は、概算で、昨年、1パーセントの上昇を見たが、それに比例して、消費者の購買力をそれだけそいできた。
このことは、第二四半期の経済を冷やすことにつながり、消費者支出は、年率で、前四半期実績の4.1パーセントから、1パーセントダウンした。
「主要な経済報告によれば、エネルギー価格は、5月に急上昇し、6月には、マイナスに転じた」と、ジェーピーモーガンのエコノミストであるロバート・メルマン氏は言う。
「私は、これは、偶然の一致だとは思わない。」とも、氏は、いう。
しかし、経済は、一定の障害許容力を見せている。
消費者は、6月には、ガソリンスタンドでのガス価格の高騰にひるみを見せたが、7月には、それに耐える力を発揮した。
全米小売協会によれば、小売店の売り上げは、自動車やガソリン、レストランを除いた指標では、6月にはフラットに推移していたものが、7月には、月平均で0.8パーセント上昇した。
そして、この協会では、新学期を控えての新学期商戦に粘り強い動きがみられると報じている。
多くのエコノミストは、それまでの経済予測を弱めに修正した。
連邦準備銀行が世論調査したところによると、30人のアナリストは、今年の後半の成長予測を、それまでの4.1パーセントから、3.8パーセントに修正し、2005年の成長予測を、0.2ポイント減らし、3.7パーセントにした。
ハリス氏もまた、みずからの成長予測を修正し、次の6四半期のGDP成長率見込みを平均0.3パーセント、カットした。
しかし、彼の言うに、金利上昇率の見込みや、昨年の減税による財政面からの景気刺激の衰えは、われわれにとって、原油価格高騰と同様、重要なものとの見解である。
「原油問題は、話の前段に過ぎない。」と、氏はいう。
今回の原油価格高騰が、過去のオイルショックに比べて、あまり心配ないとする理由は、いくつかある。
経済が、かつてよりも、原油に依存しなくなってきていることも、そのひとつである。
過去の1991年の第一次湾岸戦争中の原油価格高騰の時よりも、国内総生産に占めるエネルギー産出高は、今日では、およそ20パーセント以下となっている。
原油価格は、おもに、ガソリン価格を通じて、経済を減速化させ、消費者の懐具合に影響を及ぼし、商品の輸送コストを押し上げる。
しかし、5月の原油高騰以後は、ガソリン価格は、精油能力の増強と在庫の積み増しによって、実際、低下を見せている。
「たとえ、一バーレル48ドルであっても、小売ガソリン価格が、これまでのピークであった今年5月の価格206.4セントを、もう10セント上回るとは思えない。」と、ハイ・フリーケンシィエコノミックスのチーフ・エコノミストのイアン・シェファードソン氏は、書いている。
しかし、おそらく、過去の原油急騰と比べて、もっとも異なるのは、インフレと金利の動向なのだろう。
伝統的に、オイルが高くなればなるほど、アメリカ政府連邦準備金はタイトになり、経済活動低下へと影響を与える一方で、インフレを掻き立て、金利引き上げ圧力を増すからだ。
しかし、今回、物価は、急上昇していない。
7月の全体の消費者価格は、前年同期比わずか3パーセント高であった。
そして、エネルギーや食料品価格を除く物価は、同じく前年同期比1.8パーセントであった。
このことによって、長期金利は下がり、投資家たちは、「エネルギーコストが高くなれば、連邦政府が短期金利を上げるテンポを連邦政府は緩めるであろう。」と、判断している。
いいかえると、低金利は、家計サイドに対し、借り入れを促進させる予期せぬインセンティブを提供することになる。
この家計サイドの借り入れ増加は、ここ3年間のアメリカの景気の主要な火付け役となってきたもので、同時に、住宅建築への大きな支援となってきた。
8月13日の週に、モーゲージ銀行協会の指標は、前の週の指標に比べ11パーセントの飛躍を見せ、リファイナンスの指標は、21パーセントに上昇した。
住宅建設着工数は、7月に8.3パーセント上昇した。
「もし、1980年危機の時であれば、私があなたに「原油価格が6ドルあがった。じゃあ、住宅を買いに行こう」といったら、あなたは、私のことをきちがい呼ばわりしただろう。」と、ITG/Hoenigのチーフ・エコノミストのロバート・バーバラ氏はいう。
にもかかわらず、原油価格の高騰は、経済の破壊を引き起こすだろう。
もし、原油が現在のペースで高騰し続けるならば、暖房用石油価格は、この冬、急騰するだろうし、持ち家主や地主のコストを押し上げるであろうし、究極は、多くの賃借人への賃借料アップとなって、のしかかってくるだろう。
このように、もし、エネルギー価格の高騰が続くならば、これらは、消費者の消費性向・消費行動を変えてしまうだろう。
原油価格の高値持続は、また、製造業や公益事業などにとって重要な天然ガスのような、他のエネルギー源のコストを押し上げてくるだろう。
これによって、企業利潤は、さらに縮小していくだろう。
しかし、今のところ、原油高騰によるダメージは、破壊的というほどのものに至っていない。
「現在の原油価格は、経済成長率を減速させるに十分の水準にある。」と、エコノミストであり、カリフォルニア大学サンディエゴ校のオイルショックの専門家であるジェームズ・ハミルトン氏は、言う。
しかし、氏は、付け加えて、次のようにも言った。「しかし、私は、これによる景気後退は予測していない。」             以上


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2004年8月28日(土) 『アメリカ経済は、当初予想よりも、より低迷』との本日(2004/08/28)のAPの記事 

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以下は、本日(2004/08/28)のAPの記事”Economy More Sluggish Than First Thought ”の仮訳である。

エネルギー価格の高騰によって、アメリカ経済は、当初見込まれていたよりも、第二四半期には、より低迷した。
しかし、FDRの政策当局者たちは、この経済のペースは、大統領選挙がちかづくにつれ、ブッシュ大統領を当てにして、持ち直すものとみている。
米商務省は、金曜日、今年の4月から6月にかけての国内総生産が、年率にして2.8パーセントの成長率であり、これは、当初予測の3パーセントを下回ったと報告した。
新しいGDPの意味するところは、前年同期比対比でGDPが伸び悩んでいるということは、2004年の第一四半期での4.5パーセントという活発な成長率と比較すると、アメリカ経済が、かなり減速していることを示している。
「われわれは、もはや、全力疾走の状態にはない。しかし、曲がって走っているわけでもない。」と、アルゴス研究グループのエコノミストのリチャード・ヤマロン氏はいう。
国内総生産は、アメリカ国内で作られた財貨・サービスの価値を計るものであり、経済の健全性の広義のバロメーターと、みなされるものである。
今回の新しい数値は、エコノミストたちが予測した数字よりも、2.7パーセントわずかにましなものであった。
しかし、6月にグリーンスパンが言ったような、経済の受ける、景気の軟調局面(ソフト・パッチ)の新たな証拠となった。
しかし、グリーンスパンとFDRの仲間たちは、8月10日の短期金利引き上げに際して、「数ヶ月先には、強い拡大基調を始めようとしている。」といったのである。
民間エコノミストたちは、この7月から9月にかけて、アメリカ経済は勢いを得ると信じており、成長率見通しでは、3パーセントから4パーセントのレンジで見ている。
第三四半期のGDPについてのアメリカ政府の見通しは、11月2日の大統領選挙直前の10月29日に発表される予定である。
エコノミストたちは、FDRが9月21日には、今年三度目の金利引き上げに踏み切るとみているものの、それは、来週発表される8月の雇用統計の結果におおきく左右されるものと見ている。
グリーンスパンは、金曜日の会見では、将来の金利については、言明しなかった。
しかし、彼は、「もし、アメリカ議会が、(引退時期を迎えた)ベビーブーム世代に対し、社会保障と老人医療保障の敏速なカットを約束させる方向に動かないと、アメリカは、(社会保障制度の崩壊という)突然の手痛い選択を迫られるであろう。」と、警告した。
最近のアメリカ経済活動の片鱗は、ブッシュ大統領の共和党大会と二ヵ月後に迫った大統領選挙への準備に結びつく。
ブッシュ大統領と、彼の対立候補である民主党のケリー候補は、アメリカ経済の健全性と雇用拡大の可能性について、しばしば、やりあっている。
ブッシュ大統領は、彼が行った恒久減税は、アメリカ経済を強くするであろうし、雇用の拡大に拍車をかけるであろうという。
一方、ケリー候補は、労働市場の鈍さや、ブッシュが政権をとって以来、百十万人の職場が失われたことを指摘し、ブッシュの減税政策は、主に、富裕層を助け、中流階級を搾取したものだという。
ケリー候補のキャンペーンで発表した声明では、GDPレポートは、『ジョージ・ブッシュが、『経済は、回復への最終局面にある。』といって、アメリカ人をミスリードしてきた。」ことを示す、何よりの証拠をしめしているという。
一方、スノー財務長官は、『わがアメリカ経済は、再び、安定した足場を取り戻すであろう。」といった。
しかし、彼は、付けくわえて、「まだなお、経済のスリム化のためになすべきことがある。」といった。
エネルギー価格の高騰は、アメリカの輸入原油価格の膨張と、消費者の購買差し控えによって、アメリカの貿易収支を悪化させ、経済活動を損なっている。
原油価格は、最近は、アメリカ市場で市場最高の水準まで達したが、つい最近には、高騰緩和している。
第二四半期での大きな貿易赤字は、年平均ベースで、五千八百八十七万ドルを記録したが、これは、GDPを1.4パーセント下げた。
消費者支出は、全経済活動のおよそ三分の二を占めるが、この春には、財布の紐をしっかり締めてしまった。
これが、この四半期での経済減速の大きな要因であった。
消費者支出は、年率1.6パーセント増加したが、第一四半期の4.1パーセントという活発な伸びからはダウンした。
しかし、新しい第二四半期では、当初の予測値である1パーセントより、わずかに改善を示している。
自動車や電気製品などの高額商品への支出は、以前に報告された低下と比較すると、第二四半期では、フラットに推移した。
「自動車販売は、7月には、立ち直りを見せた。原油価格は、緩和基調にある。だから、消費支出は、次の四半期には、次第に回復するだろう。」と、レイモンド・ジェームスのエコノミストのスコット・ブラウン氏はいう。
一方、設備やソフト・ウェアへの企業支出は、第二四半期では、かなり大きな13.6パーセントの成長を見せ、これは、以前予測されたものよりも大きく、第一四半期に比較し、8パーセントの上昇を見せた。
「資本支出は、勝ち続きのように見える。」と、MFCグローバルインベストメントマネジメントのチーフ・エコノミストのビル・チェネリー氏は、いう。  以上

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