笹山登生の雑感&情報の日記

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2003年12月9日(火) ファースト・セール・ドクトリンの明確な位置づけなくして、レコード輸入権の創設なし

政府の知的財産戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)のコンテンツ専門調査会がまとめる振興策の草案の内容が6日、明らかになったが、この中で、業界で論議をよんでいるのが、レコード輸入権の創設である。

1.奇妙な「日本販売禁止レコード」という概念

今回、文化庁は、パブリックコメントを行うに際して、「レコード輸入権」という言葉を使わず、「日本販売禁止レコードの還流防止」という言葉を使っている。

この理由について、平成15年11月28日に行われた文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第7回)において、事務局は、次のような説明をしている。

「いわゆる「輸入権」の創設という言葉を「日本販売禁止レコード」の還流防止措置と変更したのは、「輸入権」という言葉が、支分権としての「輸入権」と受け取られる恐れが強いことから、実際の審議事項を一般の方に正しく理解していただく必要があると考えたためである。今までの議論においても、「輸入権」という支分権に賛成する委員もなく、日本レコード協会からの提案も支分権ではない。従って、本来の議論を忠実に反映する名称として、「日本販売禁止レコード」の還流防止措置についてとしたものである。」

「「知的財産推進計画」にいうレコード輸入権というのは、「海外企業との正規ライセンス締結を促進するため、音楽CD等の日本への還流を止める『レコード輸入権』」のことであり、内容的には現在議論している「日本販売禁止レコード」の還流防止措置と全く同様であることを確認する」

ここでいう「支分権」とは、著作権を構成する個々の権利をいうが、では、「日本販売禁止レコード」とは、現行法制の元では、いかなるものをさしているのか?

もし、レコード輸入権導入を与件としての、その一つのツールとして、販売地記載を前提として、その結果、「日本販売禁止レコード」という概念が生じるのであれば、卵を産んだ鶏が生まれ出ていない段階で、その概念についてのコメントを聴取するというのでは、コメントの前提となる初段階をすっ飛ばしたやり方であり、世に出回る正規の逆輸入盤が、あたかも、違法の逆輸入盤であるかの誤解を与えるのではなかろうか。

たとえて言えば、こんなことになるのでは、なかろうか。
「野良猫が増えてきたので、猫にも犬なみの鑑札(販売地指定)を首輪につける制度を作ってはどうか。ついては、鑑札なしの猫(日本販売禁止レコード)の処分の仕方(逆流防止措置)について、皆様のご意見(パブリック・コメント)を聞きたい。」(もっとも、実際、厚木市など一部の市町村には、猫鑑札なるものをもうけているところもあるようだが。)

これでは、まだ、猫に鑑札をつける制度が決まらない前に、鑑札なしの猫をいかに処分するかを、パブリック・コメントで聞いているようなものである。

いわば、「権利侵害行為」を生み出すために、新たな規制の枠組みを設け、その結果として、「日本販売禁止レコード」なるものが生まれるのでは、まさに「おとり行為」そのものではないか。

このように、、「日本販売禁止レコード」とは、輸入権の創設によっての「あぶり出し解釈」によって生まれうる概念なのである。

本来パブリックコメントは、予見を与えかねない概念のもとでのコメント聴取は、避けるべきであろう。

なお,文化庁が、レコードに『日本国内販売禁止』の表示をすれば、国際消尽に対抗しうると考えた根拠としては、平成9年7月1日判決のBBS事件最高裁判決であると見られる。

2003年11月14日の第6回文化審議会著作権分科会法制問題小委員会において、文化庁は、次のような見解をのべている。

「特許権における最高裁判決で「海外で適法に作成されたものは、基本的に輸入自由であるが、日本への販売禁止という契約があり、それが表示されているものについては例外的に輸入を止めることができる」というものがあり、著作権と特許権と相違する部分はあるものの参考になると思われる。」

BBS事件最高裁判決においては、「特許権にもとづく差し止め請求および損害賠償請求のいずれもが理由のないという原審の判断を是認する理由の6」として、「これを本件についてみるに、…原審認定事実によれば、本件各製品は、いずれも本件特許権を有する上告人自身がドイツ連邦共和国において販売したものである。そして、本件においては、上告人が本件各製品の販売に際して、販売先ないし使用地域から日本を除外する旨を譲受人との間で合意したことについても、そのことを本件各製品に明示したことについても、上告人による主張立証がされていないのであるから、上告人が、本件各製品について、本件特許権に基づいて差止めないし損害賠償を求めることは許されないものというべきである。」との解釈がしめされているところから、「販売先ないし使用地域から日本を除外する旨を譲受人との間で合意」があれば、国際消尽に対抗できるとの文化庁の解釈のようである。

ちなみに、http://www.netwave.or.jp/~yama-pat/jyu-hanrei5.htmにおいては、「特許権者が、右譲渡の際に、譲受人との間で特許製品の販売先ないし使用地域から我が国を除外する旨を合意し、製品にこれを明確に表示した場合には、転得者もまた、製品の流通過程において、他人が介在しているとしても、当該製品につきその旨の制限が付されていることを認識し得るものであって、右制限の存在を前提として当該製品を購入するかどうかを自由な意思により決定することができる」と、のべている。

しかし、この解釈の著作権への類推適用で、「日本販売禁止レコード」についても、日本販売禁止を明記すれば国際消尽に対抗できるかどうかについては、かなりの疑問がのこる。

ちなみに、特許権と著作権との関係についてみれば、消尽理論は、そもそもは、著作権についてのものが、特許権の世界にも派生していったという歴史がある。

平成13年3月29日の大阪高裁での、いわゆる「中古ソフト判決」では、「BBS事件最高裁判決では、傍論において特許権の国内消尽について論旨が展開されているが、特許法とは異なり、著作権法は映画の著作物についての頒布権が第一譲渡行為後においても消尽しないことを前提にしているのであるから、特許権に関する右判決を引用して、右頒布権について国内消尽を論ずること自体がそもそも的外れである。」との見解を示したのに対し、

その上告審である平成14年4月25日の最高裁判例では、「特許権者又は特許権者から許諾を受けた実施権者が我が国の国内において当該特許に係る製品を譲渡した場合には,当該特許製品については特許権はその目的を達成したものとして消尽し,もはや特許権の効力は,当該特許製品を再譲渡する行為等には及ばないことは,当審の判例とするところであり(最高裁平成7年(オ)第1988号同9年7月1日第三小法廷判決・民集51巻6号2299頁),この理は,著作物又はその複製物を譲渡する場合にも,原則として妥当するというべきである。」との解釈をしめしている。

となると、今回の文化庁の「日本販売禁止レコード」の概念は、上記三判決のいいとこどりを、それぞれしての概念のように思われる。

すなわち、BBS事件最高裁判決からは、「「日本販売禁止」の表示をすれば国際消尽に対抗できる」との論理を引き出し、また平成14年4月25日の最高裁判例からは、「特許権消尽の理は、著作権にも及ぶ」との論理を引きだしてはいるものの、平成13年3月29日の大阪高裁判決での、「特許権の判例を持って著作権・頒布権の消尽論に適用するのは無理がある」との見解や、平成14年4月25日の最高裁判例のなかでの国際消尽を認めた部分については、無視すると言った具合にである。

なお、今回の「日本販売禁止レコード」に対しては、「みなし侵害」として対処するということだ。

著作権法では,ストレートな侵害行為以外の一定の行為をも侵害とみなすことによって,十全な保護を図っている。

(1)著作権等侵害行為によって作成された物の頒布目的輸入およびその知情頒布・頒布目的所持(著113条1項),

(2)著作権侵害行為によって作成されたプログラム著作物の業務上の使用(使用権限取得時知情に限る。)(同条2項),

(3)権利管理情報の操作,その複製物の知情頒布・頒布目的輸入・頒布目的所持およびその知情公衆送信・送信可能化(同条3項),ならびに(4)著作者の名誉・声望を害する方法による著作物の利用(同条5項)

などが「みなし侵害」とされる。

侵害とみなされた行為に対しては、著作権侵害と同じように、著作権者が差止めおよび損害賠償を請求することができるが、間接侵害者に対する差止請求権を正面から扱った最高裁判決は未だ存在しないようだ。

みなし侵害(間接侵害)(indirect infringement)の域外適用(Extraterritorial Application)については、アメリカと日本での特許法と著作権法の対応は、次のようになっている。

みなし侵害(間接侵害)の域外適用について、特許法では、アメリカの特許法においては、域外適用の規定があるアメリカの特許法においては、域外適用の規定があるのに対して、日本の特許法では、域外適用についての規定がない。

著作権では、日本もアメリカも、域外適用はない。

アメリカにおいて、特許法には、域外適用あるにもかかわらず、著作権法では域外適用なしとの解釈のきっかけになったのは、ビートルズのアニメフィルム「イエロー・サブマリン」のビデオの頒布をめぐっての1994年のSubafilms, Ltd. 対 MGM-Pathe Communications Co. 間の訴訟だ。

これは、アニメ映画の製作者が、ビデオテープの頒布に当たった、アメリカ国内と海外のディストリビュータを著作権侵害で訴えたものだ。

問題は、著作権侵害行為が、完全に海外-域外-で発生したにもかかわらず、アメリカ国内の著作権法侵害に基づく訴えであったということだった。

そこで、裁判所は、
1.海外-域外-におけるアメリカの著作権侵害は、アメリカの著作権の範囲外である。
2.アメリカ域外で起こった著作権侵害については、アメリカの著作権法を域外適用しない。
との判断を示したものだ。

この第九巡回控訴裁判所-控訴院-の裁判をきっかけにして、Allarcom Pay Television Ltd. v. General Instrument Corp.,訴訟や、L.A. NEWS SERVICE v REUTERS TELEVISION 訴訟,そしてAmdahl Corp. v. Profit Freight Sys., Inc., 訴訟も同様の判断を示した。

それ以後、著作権についての域外適用はないというのが、通説となっており、日本においても、同様である。
これについては、http://www.jurisnotes.com/conflictoflaws.htm参照


2.ファースト・セール・ドクトリン(消尽)は、輸入権に優位すると言うのが、世界的な解釈

輸入権創設の発想は、日本のアーティストの邦盤CDを、海外で安く輸入業者が購入して、これを日本に逆輸入することを、著作権者の同意があれば、禁止したり、原盤に、販売国の記入を義務付けるというものだが、この発想自体は、何も、日本に限った事ではない。

たとえば、このサイトのオピニオン「ピア・ツー・ピア時代に日本の著作権法は適応できるか?」http://www.sasayama.or.jp/opinion/S_30.htmでも、紹介したのであるが、オーストラリアでは、1997年11月26日議会通過のCopyright Amendment Bill(No2) 1997で、レコードやCDの並行輸入についての制限が盛り込まれた。

しかし、このときも、国内議論は沸騰し、特に、中小の国内輸入業者への圧迫であり、同時に、アーティストに取ってみれば、有名のアーティスト優遇の制度であり、この制限は、結果として、インターネットよりの違法ファイル交換によるダウンロードを招き、アーティストの得るべきパイを縮小してしまうという論議が多かった。

この経緯については、http://artslaw.com.au/reference/paraimp983/を参考。

また、http://www.aph.gov.au/senate/committee/legcon_ctte/copyright/report/c02.htmには、オーストラリアの、2001年3月4日施行の「Copyright Amendment(Degital Agenda) Act2000」の中身の解説があり、このうちの2.16から2.28が、レコード・CDの並行輸入規制に関する解説である。

また、アメリカにおいては、著作権法602条(a)には、輸入権の規定があり、同時に、同著作権法109(a)条に、ファースト・セール・ドクトリン(first sale doctrine)が規定されている。

ファースト・セール・ドクトリン(first sale doctrine)というのは、著作権者は,購入者にパッケージ製品を売却したことによって,その記憶媒体に格納されている著作権は消尽(exhauste)してしまうという考え方である。

ファーストセール・ドクトリンは、電子的著作物の複製には,適用されず、また、ファーストセール・ドクトリンは頒布権のみに関わり,複製権には関わらないというのが、一般的な見解のようである。

しかし、このファースト・セール・ドクトリンをディジタル・メディアにもという動きが出てきた。

Zoe Lofgren 議員によって2002年10月4日提出された “Digital Choice and Freedom Act of 2002.”、
そして、2003年3月4日提出されたBenefit Authors without Limiting Advancement or Net Consumer Expectations(BALANCE Act 2003 )において、DIGITAL FIRST SALEという概念を定義し、DIGITALの世界にも、ファースト・セール・ドクトリンを適用すべしとの主張をした。

これらの動きについては、The First Sale Doctrine in the Digital Worldを参照のこと。

ここで、PHONORECORDS と DIGITAL PHONORECORDS の差について述べれば、THE FIRST SALE DOCTRINE AND DIGITAL PHONORECORDSでの定義によれば、前者は、一定の素材に固定化されたもの(fixation in a material object )をさし、後者は、一定の物質に固定化されていないもの(not fixed in any material object)をさし、さらに前者は、ファーストセールドクトリンの支配を受けるのに対し、後者は、前述のように新しい動きはあるものの、一般的には、ファーストセールドクトリンの支配を受けないものと解釈されている。

この定義からすれば、CDやビニールレコード、テープ、ゲーム機のROMなどは、PHONORECORDS であり、コンピュータの中のファイルなどは、DIGITAL PHONORECORDS であるといえる。
 

また、ファースト・セール・ドクトリンと、輸入権との劣後関係については、サイト http://tadhomma.infoseek.livedoor.net/AnarchoMusic.htmに見るように、輸入権は、あくまで、ファースト・セール・ドクトリンを前提にしてのものであるという考えが一般的である。

すなわち、http://www.aippi.org/reports/q156/gr-q156-USA-e.htm に見るように、アメリカ著作権法602条(a)に、輸入権(Infringing importation of copies or phonorecords )がみとめられているが、この権利は、ファースト・セール・ドクトリンに劣後するものであり、輸出や再輸入によって、著作権は、消尽するものであり、著作権者が輸入を妨げうるものは何もないとし、アメリカ連邦最高裁判所も、これを支持している。

ただし、いくつかの下級審においては、外資系企業やライセンシーによって海外でつくられた物の輸入を著作権者がさまたげることができるとした法的判断をしめしているところもあるとしている。

ちなみに、アメリカ連邦最高裁判所は、「Quality社がL'anza社の許可なくL'anza社製品の逆輸入をした」という1998年3月9日の判決において、「109(a)条に認められるファーストセールドクトリン(first sale doctrine)は、輸入された複製物にも適用がある。」との判断を示した。

また、日本の著作権法においては、平成11年の著作権法改正で譲渡権が新設され、ここでは、著作者は、譲渡権により、著作物の譲渡による公衆への提供をコントロールすることができるが、譲渡が、一旦、権利者又はその許諾を得た者により行われた場合には、それ以降の譲渡にこの権利は及ばず、権利は消尽してしまうとの規定がなされた。

しかし、映画の著作物などの頒布権は消尽しないということで、ゲームは映画の著作物に含まれるのかなどの論争が巻き起こった。

平成14年4月25日の最高裁判例http://www.arts.or.jp/docs/020425osaka.pdfにおいては、著作権の頒布権についても、ファースト・セール・ドクトリンを認めた 。

すなわち、この判例においては、ゲームソフトが、適法に販売され、小売店を介して、需要者に購入されたことによって、そのゲームソフトの頒布権のうち、譲渡する権利は、その目的を達したものとして、消尽するとの解釈を示した。

その解釈の前提として、消尽が認められている譲渡権は、映画の著作物を除くものについてのみであり、映画の著作物の譲渡権は、頒布権に含まれるものと見るべきであり、したがって、頒布権のうちの譲渡権についてみれば、消尽は認められるという解釈のようである。

このように、日本の著作権法においては、ファースト・セール・ドクトリン(first sale doctrine)は、きわめてあいまいな規定の元にある。

今回、日本においても輸入権が必要との声は、国内邦盤の真正品の逆輸入を規制することを目的としているにもかかわらず、平成15年12月3日に発表された公正取引委員会の見解でも懸念されていたように、洋楽の並行輸入品までをも、結果として対象にしてしまうというところに、難点がある。

また、著作権を優位にしての輸入規制は、正当な並行輸入と違法な並行輸入とを、同一視して、スキームを作っているような感じさえ見られる。

その結果、あたかも、逆輸入品が、すでに違法の輸入品であるかの誤解を世間に与えつ、輸入権導入の議論が進んでいることは、問題である。

まづ、必要なのは、「ファースト・セール・ドクトリンの明確な位置づけなくして、レコード輸入権創設なし」との原点にたったコンセンサスの醸成である。

3.内外価格差をもたらしたものはなになのか?

本来、逆輸入を可能とするグレイマーケットが生じるのは、レコードに限らず、何らかの要因での内外価格差が生じ、その交易条件を利用しての正当な経済行為の場として、市場が形成されるものである。

内外価格差は、何も、ダンピングによってのみ、生じるものではない。

制度的要因にもとづくものも多い。

先にも述べた、オーストラリアにおける1997年11月26日議会通過のCopyright Amendment Bill(No2) 1997で、レコードやCDの並行輸入についての制限が盛り込まれ、国内議論が沸騰した時、内外価格差をもたらした要因としては、コストの違いよりは、売上税の違いであるという反論も見られた。

では、翻って、日本の場合は、再販制度の存在が、レコードの硬直的な価格形成の主力な要因となっており、その元での価格形成は、価格カルテルすれすれの制度の下での擬似的な価格形成なのである。

もし、今回のレコード輸入権の創設によって、著作権優位の元で、市場流通に関与することになれば、いわば、制度の失敗を、まさに異質の著作権の権利の世界で、糊塗し、処理するということになる。

まさに、文化審議会著作権分科会法制問題小委員会自ら、認められているように、「再販制度を導入しつつ還流防止措置を導入している国はない」のである。

国内のレコード販売における再販価格制度維持を前提にして、このレコード輸入権によって、更なる価格の縛りをかけることは、http://www.arts.or.jp/cgi-bin/bbs_listmessage.cgi?PARAM=2&ID=8781にみるごとく、日本のレコード・CDマーケットひいては、国内アーティストの底辺拡大をいたずらに萎縮させるもの以外の何者もないのではなかろうか。

レコード輸入権創設に走る前に、まず、省みるべきことは、「内外価格差をもたらしたものはなになのか?」との原点に立ち返った、レコードを取り巻く制度環境の総合的な点検なのではなかろうか。

4.終わりに

2003年9月25日の文化審議会著作権分科会法制問題小委員会の議事録http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/03092501.htmを見ても、この委員会の中でさえ、このレコード輸入権についての疑義がだされている。

このように、日本の著作権法体系の不備な元で、「アメリカにレコード輸入権があるのだから、日本にも」という考えには、こうして考えてくると、いろいろ無理があるようであり、まず、論議は、日本の著作権法におけるファースト・セール・ドクトリンの明確な位置づけからはじめる必要性があるものと考える。

ファースト・セール・ドクトリンと輸入権の関係に関するサイト
1.Copyright Law and Parallel Imports
2.Call for Input on Content Control
3.Copyright Notes
4.Current Australian position
5.Laissez Faire too far? An Analysis of United States and European Union Intellectual Property Exhaustion Regimes and Parallel Trade Restriction
6.Intellectual Property and the National Information Infrastructure
7.Supreme Court Upholds the First Sale Doctrine in Gray Market Cases
8.Supreme Court Will Analyze Reach of Copyright Owner's Importation Right
9.COPYRIGHT LAW MODEL ANSWER
10.Trade Practices & Regulatory Law Reporter
11.Copyright Act Cannot Be Deployed To Halt Proliferation of 'Gray Market'
12.Patent, Trademark & Copyright Journal Index-Summary
13.QUALITY KING DISTRIBUTORS, INC. v. L'ANZARESEARCH INT'L, INC
14.Means to prevent parallel inportation still exist
15.Intellectual Property Rights
16.Territorial rights: the institutional debate
17.International exhaustion versus importation right: a murky area of intellectual property law
18.Software Imports - A Grey Area?
19.US Supreme Court: Parallel Imports of copyrighted goods are OK
20.Parallel Imports -- Trademark and Copyright Considerations in Worldwide Imports and Exports: The United States
21.Exhaustion Policy and Parallel Import
22.Anticircumvention Rulemaking
23.Lofgren's bill would extend the First Sale Doctrine to digital media or not?
24.First Sale
25.Anticircumvention Rules In the U.S. and the EU: Introduction, Comparison and Some Remarks
26.Preventing parallel imports under other legal theories
27.Supreme Court holds Harbor Tax Unconstitutional
28.Creation of a “digital first sale doctrine”;
29.The Draft IPR Enforcement Directive — A Threat to Competition and to Liberty
30.Supreme Court Limits Scope of Importation Rights
31.Saleable Copies and Auxiliary Copies
32.The First Sale Doctrine in the Digital World
33.THE FIRST SALE DOCTRINE AND DIGITAL PHONORECORDS
34.THE FIRST SALE DOCTRINE IN THE ERA OF DIGITAL NETWORKS
35.MAKING A DIGITAL FIRST SALE DOCTRINE FEASIBLE
36.On the Right to Resell Digital Content
37.Lofgren's 'Digital First Sale' Proposal Would Relax Industry Grip on Permitted Uses
38.ARTS,政府の知的財産戦略推進計画を批判
39.「知る権利」を制約する著作権強化に消費者の声を
40.無許諾逆輸入の著作権に対するファーストセール・ドクトリンの適用について
41.頒布権の限界―消尽について
42.上映権及び頒布権
43.レコード輸入権創設に係る公正取引委員会の考え方

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2003年12月24日(水) アメリカで発生のBSE牛詳細情報 (随時最新情報に更新済み)

アメリカ対カナダの対立に発展したアメリカのBSE発生問題

BSEにかかったのは、アメリカ・ワシントン州のYakimaの東南40マイルにある人口2045人のMabtonの近くの農場the Sunny Dene Ranch(オーナーは,Sid Wavrin と William Wavrinで、ここでは、四千頭以上が飼われている.)の6歳半のホルスタイン経産牛一頭で,ダウナー牛として間引きの対象となり、12月9日に、Vern's Moses Lake Meat Inc.で処理された。

(ここの
Tom Ellestad氏の話によると,この牛が歩いているのを見ており、ダウナー牛には、見えなかったという。また、このと畜場では、過度に病気の牛は、と畜しないとの方針のようだ。)

この牛は、2001年10月,Central Washingtonから買われてきた牛だが、その生地は、いまだわからず、この肥育履歴の解明には、短くて一週間、長いと、数ヶ月かかるとの見方で、要は、生育履歴記録のあるなしによるという。

USDAのAPHISがトレースバック調査した上、12月27日に発表したところによると、カナダ側の牛の耳標―耳タグ―をもとにした記録によれば、当該牛は、2001年8月(9月?)にカナダのAlbertaからIdaho州のEastport(Oroville?)に輸入された81頭(82頭?)のうちの一頭であるという。

これらの牛は、2ヶ月後、ワシントン州のMattawaのディリー・ファームに移された。(全部かどうかは不明)

この81頭(82頭?)は、乳牛として、この2年から2年半前に導入されたものであり、現在もBSE牛以外、すべてが生存していると見られるが、この全部が、BSEに汚染されているとは限らないという。

とくに、ミルクや乳製品についての危険性については、当局は否定している。

しかし、これまでの経験則からいえば、これほどの集団の中では、1―2頭の感染牛の存在は否定できないという。

このことで、トレースされるべき対象が、国境を超え、飛躍的に拡大してしまったとする見方も出てきている。

これらの一連の報道に対して、カナダのthe Canadian Food Inspection AgencyのBrian Evansさんは、「この判断のもととなった耳標は、2001年に導入されたものであり、その時点では、当該牛は、すでにアメリカにいたことになる。おそらく、当該牛は、もともとの耳標をなくし、現在の小さいsilver ear tag が後につけられたものとおもわれる。一日も早いDNA鑑定をしていただきたい。」の述べ、また、カナダ・アルバータ州のShirley McClellan農相は、「カナダ産であると結論付けるのは、時期尚早である。」と反論し、カナダ側は、国際鑑定を主張している。

また、カナダ側は、当該牛の親牛(種牛)の精液サンプルも所有しており、これとDNA鑑定との比較で決着が付くとしている。

このカナダ側の強硬な反論の裏には、昨年のカナダのBSE以来のアメリカとの輸出再開問題が絡んでおり、この日、アメリカ側は、これまでの方針(今年10月末に、生後30カ月未満を条件としてカナダ産生牛の輸入再開方針を示し、来年1月5日まで関係者から意見を受け付けるとしていた。)を、見直すことを明らかにした。

当局では、この残りの80頭(81頭?)の牛全部についてのトレースを、この3―4日以内に終えるという。

そして、12月31日までに、このうちの9頭の居場所が確認されたという。

これに関しては、カナダ側は、Albertaの元オーナ−との連携もとるとしている。

また、当初は4歳半とされた牛が、12月27日になって、カナダ側の記録では、1997年4月生まれの6歳半とわかったことで、理論的には1997年8月4日施行の反芻動物関係飼料混入規制規則施行(the 1997 Animal Feed Rule)以前に、汚染飼料に曝露されていたことにはなる。

しかし、当局は、この当初発表の年齢との食い違いを重視し、DNA鑑定の上、当該牛であるかどうかの確認を、これまで急いでいた。

2004年1月6日、アメリカ・カナダ両当局は、アメリカのBSE牛は,カナダ産のものであるとのDNA鑑定結果を発表した。

DNA鑑定は,12ポイントにわたるもので,the University of Saskatchewanと,USDAのNational Veterinary Services Laboratoryとが,別々に、これにあたった。

対象サンプルは、アメリカで発見された6才半のBSE牛の脳の組織と、その牛の種牛と見られるカナダの雄牛の精液とのDNAの比較で行われ、アメリカ側・カナダ側とも、両者の一致を確認した。

今後,USDAは,さらに,残されたthe Leduc areaから輸入された71頭についても,同様の検査をする予定である。

尚、この日の当局の会見では、カナダのBSE牛とアメリカのBSE牛との発生原因との関連性については、今のところ確証がないと述べた。

また、この日、当局は、先の80頭(81?)のアメリカ輸入に続く便で、同じ群れにいた17頭が、次の便で、アメリカに輸出されたとの、新たな報告をした。


アメリカとカナダのBSEをむすぶ、レンダリング工場か?


2004年1月1日にはいって、カナダの AlbertaにあるEdmonton rendering plantが、昨年5月発生のカナダのBSE と、昨年12月のアメリカのBSEを結ぶキーポイントになるかどうかが、注目されている。

この情報は、地元紙のthe Edmonton Journalがhttp://www.canada.com/edmonton/edmontonjournal/story.asp?id=1BA92170-6D04-4E78-AA99-0E21095B9D07で伝えたもので、これによると、ここの飼料 工場で、1997年8月前に飼料の交差汚染があり、これが、アメリカ・カナダのBSE発生の原因ではな いかと疑われているということであり、現在当局による調査が入っているとのことである。

その頃は、このレンダリング・プラントでは、豚用と牛用の蛋白飼料を、同じプラントで、作っていたとい う。

the Canadian Food Inspection AgencyのTom Spillerさんは、「Edmonton地区のレンダリングプラントで 交差汚染した飼料を、アメリカとカナダのBSE牛が食べたことはありうると推測できる。

しかし、当該農 場では、当時の飼料記録を持っていないので、そう結論づけることはまだできない。」としている。

カナダの調査官は、この蛋白飼料をつかったとされる他の農場についての追跡調査は、今週末にも予 想されるDNAの結果が出るまではしないであろうという。

また、その他の81頭の牛が来たとされるLeduc 地区の農場についても調べているが、この農場は、す でに2001年に農場主の健康上の問題で閉鎖されており、それまで飼われていた牛は、すでにアメリカ に輸出されたという。

そのことから、このLeduc 地区の他の農場でも、飼料使用禁止される前の1997年6月と7月には、同 じ時期に交差汚染された飼料を使っていたと考えられる。

そのときには、合法的にNorthern Alberta Processing Co.,のEdmonton rendering plant( West Coast Reduction Ltd 所有)の肉骨粉が、飼料として使われていたともみられる。

また、この原料がどこから来たかということについて、Spillerさんは、思い当たる筋はわかるが、今はいえないとしている。

また、カナダのMel McCrea's farmのBSE牛に使われた飼料は、別の工場からのものではあったが、Spillerさんが言うには、その工場もNorthern Alberta Processing Co.,から、蛋白飼料原料を手に入れることは出来ただろうといっている。

このThe Edmonton plant は、昨年8月に操業停止している。

ワシントン州で発見のBSE牛の耳タグには、Leduc 地区の名前が認識されている。

また、Northern Alberta Processing Co.,では、昨年2月に、カナダ発のBSE発見牛の農場であるMarwyn Peaster農場のダウナー牛をレンダリングしているという。

さらに、このレンダリング会社は、昨年の定期検査の際に、10種類の飼料分類ラベルのうち3つについて、豚の毛が入っているものをフェザーミールとするなどの不当表示を行っていたとの疑いもかけられている。

このような憶測に対して、カナダ政府は、今週末のDNAの発表があるまでは、はっきりしたことはいえないとしている。


BSE発見から検査・隔離・リコール決定までの経緯


今月9日に行われた米当局者による狂牛病検査で"presumptive positive"「推定(仮性)陽性」 であることが明らかになった。

12月9日以後の経緯については、http://www.agweb.com/news_show_news_article.asp?file=AgNewsArticle_200312291423_4512&articleid=104394&newscat=GN参照

この時の検査では、採取されたサンプルは、まず、アイオワ州のAmesにあるUSDAのNational Veterinary Services Laboratoryに送られ、顕微鏡検査による組織検査と、免疫組織化学的検査が行われ、検査結果が12月22日に返ってきて、12月23日に再検査に回された。

この間において、USDA検査とは別途の検査として、採取されたサンプルを米軍ジェット機で英国の研究所(Veterinary Laboratories Agency (VLA) )  に搬送され、25日、農務省の判断と一致する結果が出たとし、この牛のBSE感染を確認した。

消費者団体の間では、この最初の12月9日の検査から12月25日のVLAによる最終確定までの16日間の間に、当該牛よりの肉製品が市場に出回ってしまったことを問題視し、現在のリコール制度の欠陥を指摘する声もある。(これについては、http://www.realcities.com/mld/krwashington/7581646.htm参照) 

すなわち、USDA発表によれば、リコール措置は、一時検査結果が出た翌日の12月23日までは、とられなかったのである。

このことについて、USDAのスポークスマンであるDan Puzo さんがいうには、22日の結果を見て再検査にまわしたので、ウェブサイト上にリコールの要請が出たのは、24日の午前1時半になったという。(この間の事情については、http://www.tallahassee.com/mld/democrat/7582642.htmを参照)

この間において、USDAは、関係機関との総合的な連携検査体制を敷いた。

感染牛が見つかった農場であり、感染牛が産んだ三匹の子牛の一匹が同居していた the Sunny Dene Ranchは、検疫、隔離措置がとられた。

そして12月26日には、感染牛から生まれた雄の子牛が育ったワシントン州YakimaカウンティのSunnysideのstate dairy farmも、隔離された

これは、子牛が十分成長するまで、持ち主以外の飼育場で育てられたためであるとされる。

当初、この子牛は、耳標―イヤー・タグ―をつけていなかったため、当該の子牛を区別するため、生後7日から30日以内の子牛400頭が、と畜され、検査されるとされていた。

2004年1月5日になって、USDAは、と畜される牛の数は、450頭であり、牛の年齢がいずれも30ヶ月以内であるため、検査はしないと、発表した。

また、農場主に対しては、と畜牛分450頭について、市場価格での買い上げを行うと発表した。

この後、450頭については、1月6日に処分を行い、処分後の検査は行わなかった。

1月9日に、新たに129頭の処分を行うと発表、これについては、BSE検査をするとしている。

この129頭は、BSE感染牛がいたMabtonの農場のものであり、カナダから来た81頭の牛と同居していた258頭のうちの一部であるという。

この258頭のうち、110頭については、すでに、間引きされ、と畜後、食用に回ったものと思われる。

258頭のうち、19頭については、記録がなく、未処分だが、これについても、そのうちと畜されるものと見られている。

なお、感染牛が産んだ子牛の一匹は、2001年に生まれてまもなく死んだという。

2004年1月2日になって、USDAは、第三回目の隔離が行われたことを発表した。

これは、問題牛とともにカナダからアメリカに送られてきたと見られる81頭(82頭?)の牛のうちの10頭で、そのうちの1頭は、ワシントン州のYakima近くのMattawaのデイリーファームで隔離され、9頭は、Mabtonの、BSE牛がいた農場the Sunny Dene Ranchで隔離された。

この結果、差し引き、カナダから輸入された牛で、まだ、隔離されていない牛は、70頭となった。

以上を整理すると、
2001年9月にカナダのAlbertaからアメリカOrovilleに輸入された牛は、81頭。(82頭という数字も報道されている。)
内、1頭が、BSEにかかった牛。
残りの80頭のうち
今回、1頭が、ワシントン州のYakima近くのMattawaのデイリーファームで隔離。
9頭が、Mabtonの、BSE牛がいた農場the Sunny Dene Ranchで隔離。

この結果、隔離されているグループは、3グループとなり、
第一グループは、Mabtonの、BSE牛がいた農場the Sunny Dene Ranchの9頭と、BSE牛が産んだ子牛1頭と、その群れ。
第二グループは、BSE牛が生んだ雄の子牛が育ったワシントン州Yakimaカウンティの農場の、子牛一頭と、その群れ。
第三グループは、今回隔離されたワシントン州のYakima近くのMattawaのデイリーファームの一頭と、その群れ。

差し引き、カナダから輸入された牛で、まだ、隔離されていない牛は、70頭と、その群れとなった。

なお、今回の隔離の対象は、10頭でなく、11頭とその群れという報道もある。

そして、これに加え、新たに、17頭が、その後の便で、同じくアメリカへ輸出されていたことがわかったので、まだ、隔離されていない牛は、87頭ということになる。

さらに、1月10日になって、Mabton農場から、7頭が、Quincy地区の農場に向ったとの推測がされており、これが確認されると、新たに、Quincy地区の農場が隔離の対象になる。

2004年1月13日、USDAは、現時点でのトレース結果を次のように発表した。

カナダからアメリカに輸入された81頭の牛のうち
1頭は、当該BSE牛
3頭は、Mattawaの農場で隔離されており、近いうちにと畜
7頭は、この農場から他の農場に移送された可能性があり、確認中
9頭は、BSE牛の群れの中にある。
残りの牛については、BSE牛の群れの中にあると推測されるが、確認できない。

とのことである。

ここで、隔離と、と畜の状況を現時点で整理すると次のようになる。

第一隔離グループ-Mabton農場-BSE牛がいた農場で、4000頭の牛がいる。そのうち、カナダのAlbertaから、BSE牛とともにきた、81頭と同じ群れと思われる牛が258頭おり、そのうちの110頭は、すでにと畜場に回され、食用に回ったものとみられる。

残りの148頭のうち、129頭は、近日中にと畜を行い、と畜後、検査をすると、1月9日、USDAが発表した。

残りの19頭については、記録がなく、処理未決定であるが、これについても、と畜されるものとみられる。

第二隔離グループ-SunnySideの農場-BSE牛が産んだオスの子牛が育った農場で、その子牛が耳標をつけていなかったため、対象牛を確定することが出来ず、やむなく、そこの450頭を、1月6日にと畜したが、と畜後の検査はしなかった。

第三隔離グループ-Mattawaの農場-カナダのAlbertaからBSE牛とともに輸入されてきた81頭のうち1頭がいた農場で、ここの群れについての処分は、まだ決まっていないが、おそらく、と畜される予定との報道である。

また、このカナダから81頭が輸入された後に、次の便で、17頭が、同じく、アメリカに輸入されたことがわかっているが、そのトレースはまだ出来ていない。

ここにきて新たに、Mabton農場からQuincy地区の農場に、7頭がむかったのではないかと推測されてきた。http://seattletimes.nwsource.com/html/health/200183 3865_madcow10.html参照

今回、もし、7頭がQuincy地区の農場に移送されたとすれば、第四グループの隔離対象の群れが出来ることになる。



加工・販売段階でのトレースとリコールの状況


と畜処理後の肉は、次の加工経路に乗ったと見られる。

まづ、と畜場から、12月11日に、一台のトラックで、ワシントン州CentraliaのMidway Meats Inc.に、向かった.

Kenneth Petersenさんの話によると、このときには、すでに、肉は、骨格から、切り離されていたという。

なお、この日に同時に処理されたのは、この他に9頭あり、この分の10410ポンドの生肉は、汚染肉に接触の可能性があったため、同日、自発的に回収された

12月13日に、Midway Meats Inc.から,さらに,加工のため、おそらく,ミートカットは、ハンバーグ用としてオレゴン州ClackamasのInterstate Meat Distributors Inc.に,そして,残りの、ハンバーガーに適さないミートカットと骨は,同じくオレゴン州PortlandのWillamette Valley Meat Co. に運ばれたと見られている。

Interstate Meat Distributors Inc.では、受け取った肉をひき肉にし、各種のパテを作った。

リコールの知らせがあった時点で、そのうちの25パーセントは、まだ、顧客に配送していなかったという。

この後の流通経路は、いまのところ、定かでないが、加工処理としては、この段階で、ひき肉や、ビーフ・パテに加工された可能性大であって、ステーキカットやプライムリブに加工された可能性は少ないと、専門家は見ている。

そして、加工後の製品は、12月13日に顧客宛に出荷されたものと見られている。

そこで、USDAのFSISは、Class IIのリコール要請を出した。

ちなみに、リコールには、クラスT.クラスU.クラスVの三段階があって、クラスUは、その製品を使用することによって、健康を害する潜在的な可能性がある場合のリコールであるとしている。
(これについては、http://www.safetyalerts.com/rcls/class_exp.htmを参照)

そして、当局は、Oregon, southern Washington, Idaho, Utah の州のアジア系・メキシコ系の75店の零細食料品店に対して、次の品物についてのリコールを要請した。

週末にかけて、これらの店を訪問するという。

すなわち、「Interstate Meatで出荷した、プレ・パッケージの新鮮ひき肉で、一ポンド中、赤身85パーセント、脂身15パーセントのひき肉で、2003年12月25日に売られたもの」についてのリコール要請である。

リコールの対象は、4,500 キログラム(約10,000ポンド)と見られている。

当局によると、12月30日現在、100のコールがあったという。

また、モンタナ州では、12月31日現在、4箇所から、102ポンド(約46キログラム)の回収があったとのことだが、どこからの回収であるかは当局は明らかにしていない。

しかし、ここにきて、USDAは、当該牛の肉が売られたのは、California, Nevada, Oregon, Washingtonの4州に流れたと発表したが、さらに、日曜日になって、USDAは、Alaska, Hawaii, Idaho, Montana. Guamにも問題肉は流れたと発表、関係州は、ワシントン州を含め合計8州+グァムとなり、これらの州に対して、USDAは、リコール要請をした。

2004年1月1日になって、USDAは、シッピングレコードを確認したところ、ハワイ・グァム両地域には、問題肉は、出荷されていないことがわかったと発表した。

当局の推定では、送料のうちの80パーセントは、WashingtonとOregon両州にながれたとみている。

なお、危険部位(Specified Risk Material (SRM))については、レンダリング工場に向ったものと見られている。

小売り筋の対応として、Albertsonsチェーンは、オレゴン州・ワシントン州・北アイダホ州のスーパーで12月25日に売られたビーフひき肉パッケージについての回収を消費者に要請している.

Albertsonsがリコールの対象としているのは、次の製品である。

1.一個詰めプレ・パッケージの新鮮ひき肉で、一ポンド中、赤身85パーセント、脂身15パーセントの、ひき肉で、2003年12月25日に売られたもの
2.二個詰めプレ・パッケージの新鮮ひき肉で、一ポンド中、赤身85パーセント、脂身15パーセントの、ひき肉で、2003年12月25日に売られたもの
3.一個詰めプレ・パッケージの新鮮ひき肉パテで、一ポンド中、赤身85パーセント、脂身15パーセントのひき肉で、2003年12月25日に売られたもの
4.Butcher Block Service Case から2003年12月16日から23日の間に購入した、一ポンド中、赤身91パーセント、脂身9パーセントの、ひき肉

また,Albertsons, Fred Meyer, Safeway、 WinCo Foods の4チェーンは、対象BSEを扱ったオレゴン州の二つのディストリビュータのうちの一つから、ひき肉(ground beef)を仕入れたと、公表した。

これらの4チェーンは、自主的に対象ひき肉を撤去した.

小売り関係のリコール関係については、http://money.cnn.com/2003/12/24/news/companies/madcow_stocks/index.htmを参照。


関係業界にあたえる影響


当局は、これまでのひき肉関係のリコールにとどまらず、家庭菜園関係肉骨粉肥料や、蝋燭原料獣脂のリコールまで拡大することを検討中であるという。

現在考えられている対象牛の副製品の疑いがもたれているのは、次のものである。

対象汚染牛のヒズメ、骨、副生物から作られたものとしては、ハンドクリーム、家禽飼育用の不凍液、造園用の土などである。
この関係業者は、北西部に6業者はいると見られる。

また、二次製品としては、土、石鹸、蝋燭などの原料である。

レンダラー関連業界の一連の動きの一つとして、ロサンジェルスを本拠地とするBaker Commodities Inc.,は、ワシントン州のSeattle とTacomaのプラントにあった牛の副生原料800トンを自主的に撤去した。

この会社は、蝋燭や潤滑財、石鹸の原料となる牛脂(タロー)と、化学肥料やペットフードに使う骨粉を作っている会社である。

この廃棄による同社の損失は、20万ドルに上るとしている。

一方で、レンダリング最大手で、TacomaやPortlandにもプラントがあるDarling International Inc., は、Commodities Inc.,社同様の措置をとるかどうかについてのコメントは避けている。

FDA(The Food and Drug Administration )の発表によると、当該牛の副産物―肉骨粉や牛脂などを扱ってたワシントン州とオレゴン州のレンダリング会社が、FDAと連携し、自主的に回収しことで、当該牛の副産物を使った製品は、市場に出回っていないという。

小売店段階では、アメリカ牛肉の輸出激減で、国内供給過剰になったところから、大幅な値下がり傾向が続いており、これが逆に、国内売り上げ増につながるという逆転現象が生じている。

関係業界に与える影響について、この数日間で、アメリカンビーフは、世界のマーケットの90パーセントを失い、24カ国以上が禁輸措置をとったが、産業界の見積もりとしては、食品・農業関連含めて、これにかかるコストは、150億ドル程度であると見ているが、一部のエコノミストのなかは、400億ドルの被害を、さらには、農業関係者の間では、将来的には、1700億ドルの損失を予測する向きもある。

マグドナルド社は、この肉の流通経路とはリンクしていないと、関係のなさを強調したが、同社のニューヨーク取引所での株価は、$25.28から$24.20 に急落した。

マグドナルド社のライバルのWendy'sは、今回の牛がダウナー牛であったことをとらえ、「当社では、これまでずっとダウナー牛を使わないことにしている。」と、強調した。

また、マグドナルド社も、Burger King も Arby'sも、ダウナー牛を使っていない旨の声明を出した。

穀物業界では、BSE発生の業界に与える深刻さを予測しているが、逆に、動物性飼料から、植物性飼料へのシフトによる需要像を期待する向きもある。

さらに、生体牛などの家畜業界では、これが単にワシントン州にとどまらず、アメリカ全土に拡大することを極度に恐れている。

今回の発見による、価格の下落や輸出の減によって、アメリカ経済は、生体牛の価格の12―16パーセントの下落だけ20億ドル―約二千億円の被害をこうむるとの予測が、エコノミストから出ている。

ちなみに、と畜場での価格は、先週1200―1500ドルしてたものが、今週になって800ドルに急落しているという。

一方、依然BSEフリーであるオーストラリア・ニュージーランドなどは、アメリカ肉からのシフトを期待している。

たとえば、ニュージーランドでは、アメリカ国内の消費者需要が、牛肉から羊ラム肉にしふとするとみて、価格アップ15パーセントと見ている。
 
特に、French Rack と呼ばれるあばら骨付き肉は、現在でも、昨年同時期対比17パーセントアップという高値をつけているという。

しかし、一方の牛肉需要はと見れば、北アジアの需要が、アメリカからニュージーランドへシフトすることは期待されるものの、これまで、ニュージーランドの牛肉輸出の半分を占め、輸出総額の70パーセントに当たる17億ドルを占めていたアメリカ・カナダのマーケットの価格ダウンの影響はある。

これは、牛肉輸出の46パーセントをアメリカ向けにしているオーストラリアについても、事情は同様のようだ

また、意外な恩恵を受けている国として、マレーシアのパームオイルがある。

これまでの動物性飼料に大豆ベースの植物性飼料がとってかわるとの思惑の元に、パームオイル価格が上昇している。

また、大豆のシカゴ相場も、急騰を見せている。


問われるアメリカのBSE体制の不備

2001年に、アンチ・ミルクで知られる団体the Physicians Committee for Responsible Medicine's (PCRM)がVeneman農務省長官あてに出した、アメリカのBSE体制に対する警告要請が2003年12月29日、明らかになった。
http://www.republicons.org/view_article.asp?RP_ARTICLE_ID=1066 参照

ここでは、以下の4点を指摘している。

1.血や血液製剤、ゼラチン、ミルク、乳製品についての飼料への使用制限がないこと。

2.1997年施行のthe 1997 Animal Feed Ruleから、馬や豚への飼料の禁止が除外されているため、馬や豚への反芻動物関連飼料の使用がつづいていること。

3.レストランからの残飯という形で、牛肉や肉製品のリサイクルが行われ。それが、動物への飼料に回っていること。

4.反芻動物の遺骸が、家禽や養殖魚への餌となり、今度は、その家禽が出した糞便やごみが、慣習的に、反芻動物の餌になったりすることへの制限がないこと。

以上の4点が指摘されていたことがわかった。

また、これまで、アメリカでのBSE体制の不備として、これまで、次のような点が、専門家の間から指摘されてきた。

アメリカ初BSE発見の6週間前、Stanley Prusiner氏は、Veneman農務長官に会い、アメリカの検査数が少ないことに警告を発し、「カナダで起きたことは、アメリカでも、必ず起きる」との予告さえしていた。

また、Sheldon Rampton氏は、1997年以来禁止の危険部位についてのモニターがアメリカでは不足していることの危険性を訴えてきた。

さらに、Gene Bauston氏は、現在の検査体制の不備を訴えてきた。

これらの声は、昨年のカナダでのBSE発生を契機にますます強くなり、「カナダとアメリカは、BSE運命共同体」との声すら起きていた。

ちなみに、アメリカ・サウスダコダ州選出の上院議員トム ダシュル(Tom Daschle)氏と、Tim Johnson氏は、カナダのBSE発生後の2003年6月17日、ベネマン農務長官(Ann M. Veneman)にたいし、http://www.namp.com/jun1703.pdfのような書簡を送り、BSE検査の増加、FDAの飼料禁止措置の徹底や、神経症状を見せる動物に対する検査の増加と、監視体制の徹底を、この際、図るべきであるとする意見を提示し、同時に、USDAが、適切な時期に、BSE検査数の増加、検査技術の充実、検査要因の確保など、BSE検査体制の総合的な充実策を盛り込んだプロジェクトにたいし、財政措置を図るべきことを議会に提案するように、望んでいた。

このカナダでのBSE発生時の状況については、私のサイト、「カナダのBSE問題についての発言集」に、発生から一応の終結にいたるまでの状況が、時系列的に記載されていますので、ご参照ください。

これらの指摘を含めての、専門家からの指摘は次の6点である。

1.ダウナー牛の検査サンプル数が少ないこと。ダウナー牛にかぎらず、検査数の少ないことについてUSDAでは、この二年間二万頭についての検査をしたが、この回数は、国際標準の、45倍にあたるとしている。

そして、2004年には、この数を二倍の40000頭にする計画であるという。

また、アメリカは、検査関係予算として、一千五十万ドルをおいており、そのほとんどがテストのための予算であるとしている。

アメリカでは、毎年三千五百万頭の牛がと畜され、家畜総数は、九千万頭から一億頭の牛が飼われている。

2.ARM(Advanced Meat Recovery )またはMRM(Mechanically Recovered Meat )とよばられる機械システムによるくず肉のかき出しシステムに危険部位が混ざることについての安全性の欠陥

3.動物性飼料(animal-derived feedstuffs) の全面禁止をしていない。

4.簡易検査-ラピッドテスト―によるスクリーニングが十分ではない。

なお、新年に入って、Ohio State University's Ohio Agricultural Research and Development Center (OARDC)は、有効なラピッドテスト法を開発したと報じられている。

5.国際的なトラッキングシステムの開発が必要である。

たとえば、Grand IslandにあるSwift & Companyのthe Secure Identity Preservation System や、Swift Trace systemは、生体牛から、パッケージ後の牛肉製品までの一貫したトレースバックと個体認識が可能なシステムである。

また、Global Technology Resources (GTR) のglobal positioning system (GPS)
も、グローバルな食品トレースシステムである。
これについては、http://www.theindependent.com/stories/081103/new_swift11.shtmlhttp://www.theindependent.com/stories/123103/new_swift31.shtmlをご参照。
 
6.個体認識システムの導入が急務である。

7.CWD(Chronic Wasting Disease)とよばれるヘラジカ(Elk)のBSEと同じ症状についての究明

8.Food and Drug Administration,によって年一回、約一万二千の飼料工場を対象に行われる禁止飼料検査が形骸化し、飼料サンプルを検査員が持参しない単なる書類検査に終わっていることと、また、農民の検査資料の保管年限が1年に限られているため、BSEの潜伏期間が経過した後では、それを実証すべき検査資料がすでに廃棄されているなどの、多くのループホールがあること。

9.農場内では、他の家禽用の飼料の30パーセントが、あふれ出て、、牛用の飼料との交差汚染を引き起こしている。

10.子牛の初乳・代用乳に使う血漿入りの代用乳(spray-dried blood and plasma product)の禁止がFDAからなされていない。

などの点である。

さらに、アメリカがBSE発生国となったことでの新たな問題として、世界最大の血液製剤の輸出国として、血漿分画製剤の原料血漿の輸出国としてのアメリカの安全性を疑問視する声が、イギリスを中心にして出てきた。
Checks urged on US blood products
Blood closely screened against human variant of BSE
Blood donors face ban over mad cow

ただ、これについては、緊急の病人の生命にかかわることでもあり、「マス・ヒステリア」をいさめる声も一方である。Call for calm on import of US blood products



久々にスポットライトを浴びるダウナー牛問題



これらの諸問題点のうち、特に、ダウナー牛と検査体制についての取り扱いが、今後、議論の焦点になるものとみられる。

アメリカでは、ダウナー牛や、病気にかかった牛のと畜を禁止していないが、このことについて、USDAでは、歩行困難な牛が必ずしも、病気の牛とは限らないとの見解を示している。

USDAによれば、昨年、神経中枢が侵され、と畜された牛が130頭あり、このすべてについて検査をしたと、いっている。

もともと、このダウナー牛問題は、アメリカでは、かねてより「ダウナー牛症候群」といわれてたたものだ。

イギリスで1985年に世界で始めてのBSEが発見される数年前に、アメリカのダウナー牛(ダウナーカウ(へたり牛))に、BSEと同じ症状を示す奇病が発生していて、これが、Downer Cow Syndrome といわれた症状だ。

1961年に、ウィスコンシン州の6つのミンク農場にMad Mink Disease(または、Mink - TME Transmissible mink encephalopathy) といわれる病気が蔓延し、1963年には、さらに二つの農場で、発生した。

そこで、このときの餌を調べたところ、そのミンクの餌となっていたのが、羊の肉ではなくて、ダウナーと呼ばれる、突然死したり病気で歩けなくなった牛のひき肉だった。

1985年には、さらに大規模のMad Mink Disease(または、Mink - TME Transmissible mink encephalopathy)がStetsonvilleで発生した。

このときの餌の95パーセントは、ダウナー牛の肉だった。

そこで、マサチューセッツ工科大学とアメリカの国立衛生研究所(the National Institutes of Health)が、BSEと飼料と痴呆症状との関係を、1981年にさかのぼって調べた。

しかし、アメリカの牛肉産業は、「ダウナー牛は、BSEではない。」と主張してきた。

ウィスコンシン大学のRichard Marshさんは、自身、ミンク牧場の息子として生まれたが、Stetsonville近くの農場での実証研究で、1985年、「病気の民から取った組織は、牛の病気を引き起こし、また、逆に、病気の牛の組織は、ミンクの病気をひきおこす。」という因果関係があることを突き止めた。

そして、Richard Marshさんは、「アメリカも、BSE大量発生の危険性がある。」と、結論付けた。

しかし、1990年の産業会議 や、1993年のBSEシンポジウムでは、必ずしも、Richard Marshの警告は世に受け入れられず、『人騒がせ』との批評を受けていた。

その後、1996年、アメリカ農務省は、反芻動物からとった飼料を反芻動物に与えることの自主的禁止措置をとり、また、1997年には、FDA―食品医薬品局-は、正式の禁止措置を提言したことで、彼の人騒がせとの嫌疑は晴れましたが、1997年3月23日に、58歳でなくなった。

Richard Marshさんの残した言葉のひとつに、「MAD COWS ARE NO JOKE」-アメリカ人にとって、BSEは、ジョークではすまされない。- というのがあるが、まさに、今回のアメリカでのBSE発生によって、ジョークでないことがわかったというわけだ。

そのほかのRichard Marshさんの残した言葉については、http://www.mad-cow.org/~tom/Marsh.htmlを参照。

このダウナー牛の食用禁止については、これまでいろいろな動きがあったが、最近の動きとしては、2003年6月19日に、アメリカのハワイ州選出上院議員のDaniel K. Akaka さんが、the Downed Animal Protection Actを提出した。

アメリカ消費者連盟は、このたび、声明を出し、ダウナー牛に対する対策や、ARMやMRMの肉を使用しないようにとの要請を,http://www.consumerfed.org/revisedctf.htmlで要請した。

また,全米人道協会(The Humane Society of the United States.略称 HSUS. )は、http://www.hsus.org/ace/20208のように、ダウナー牛を食用に供しない旨の声明を出した。

民主党のJohn Kerry上院議員は、http://www.bayarea.com/mld/mercurynews/news/politics/7589070.htmに見るような検査体制の一新を訴えた。

ダウナー牛は、年間と畜される3500万頭のうち、13-15万頭から20万頭であるといわれているが、実数がそれかどうかはわからない。

しかし、このダウナー牛問題は、今後、米国内議論の中心になるものとみられ、日本政府が、アメリカの検査体制に妥協的な態度をとり、安易な輸入再開に加担すると、結果として日本が、このダウナー問題の深刻さを糊塗することになるものと思われる。


簡易検査(Rapid Test)実施に消極的なUSDA



http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20030708-044102-7940r
によると、アメリカの牛肉がBSEフリーであるかどうかを立証するには、あまりにもスクリーニングの数が少なすぎると United Press International は報じている。

今年のカナダのBSE発生の折、アメリカでのBSEの可能性について取りざたされたが、当時、この可能性をアメリカ側が否定するためには、BSE簡易検査(Rapid Test)の早急な実施によるしか方法がないとされていた。

このBSE簡易検査によれば、2-3時間で結果が出てくるので、何百万頭の牛のスクリーニングが可能となり、結果、アメリカの牛肉の安全性も、確保されうるとしていた。

現在のimmunohistochemistry (IHC) テストは、"gold standard" と呼ばれる1994年採用の伝統的な検査方法で、これについては、National Animal Health Laboratory Network (NAHLN)とThe National Veterinary Services Laboratories (NVSL)がバックアップしているが、結果が出るまでに8日を要するのが欠点だ。

今回の場合も、12月9日の結果が出るまで、10日以上かかった。

昨年、USDAが実施したスクリーニング数は、三千万頭のと畜数のうち、わずかに、二万頭に過ぎなかった。

これは、BSE発生如何を突き止めるには、ありに少なすぎるスクリーニング数であると、識者は指摘している。

これまで、USDAがBSE簡易検査の採用をためらっていたのは、一頭でも、BSE陽性または擬似陽性の牛が発見された場合の、あまりの財政的負担の大きさにあったのではないかとされていた。

しかし、その結末は、今回の「アメリカBSE発生」という膨大なツケとなって現れてしまった。

ある獣医は、「もし、五百万頭の牛を検査したなら、必ずBSEの牛は出てくるだろう。だから、USDAは、BSE簡易検査の採用をためらっているのだ。」と、当時、断言していた。

また、この識者は「ダウナー牛についても、健全な牛と同様のスクリーニング検査をすべきである。」と、主張している。

現在、アメリカには、昨年、三千六百万頭のと畜数のうち、二十万頭のダウナー牛がいたが、そのうち、スクリーニング検査にかけられたのは、わずか、二万頭に過ぎなかった。

病気の牛についても、スクリーニング検査される数は、ヨーロッパに比し、著しく少ない。

カナダとアメリカとの間には、ここ数年、百五十万頭の生体牛が両国を行き来し、百二十万メートルトンの牛肉が、カナダからアメリカに入ってきている。

カナダでのBSE発生を契機に、もし、このアメリカ・カナダ両国で簡易検査採用を決めたならば、その効果は絶大だろうとの声はつよいが、しかし、USDAは、Genesis Bioventures, Inc.の簡易テストの採用などを、、将来のプランに入れているとしながらも、いまだに、旧来の検査手法にこだわり続ける構えを見せている。

そして、ここにきて、12月30日、べネマン長官は、今後、36時間から48時間以内に結果のわかる検査方法を採用すると発表した。

採用される検査方式についてはBio-Rad Laboratories Inc. Abbott Laboratories Inc. (Enfer Scientific),Genesis Bioventures, Inc. Novamex USA ,InPro Biotechnology  などの簡易テストあたりが有力視されている。


日本とアメリカとのBSE対応は、イコール・フッティング(競争条件平等化)であるべき



今回、アメリカは、輸入禁止措置の緩和を求めているが、これは、日本のBSE発生時にとったアメリカの方針とは、著しく平仄の合わない論理ではある。

2002年1月発表のGAOの報告では、BSE発生国から輸入の生体牛のモニターの必要性に付いて強調し、この中で、特に一昨年の日本でのBSE発生時の、日本より輸入の生体牛のモニターに付いてふれている。

日本からの生体牛の輸入は、1993年から1999年にかけて、242頭が輸入され、USDAは、そのうちの214頭の居場所を突き止め、28頭については、なお居場所確認中とのことである。

この居場所を確認できた214頭のうち、24頭はすでにと畜され、また40頭は輸出されていたので、残りの150頭に付いてモニターをはじめた。

この報告書では、生体牛によるBSE汚染の可能性は、危険部位汚染よりは、確率は低いものの、この危険性評価方法に付いて確立すべきものと提言している。

これらの経緯から、もし、反対の立場で、日本が今回のアメリカのBSE発生時に応じた対応をアメリカに対して行うとすれば、すでに北海道などに生体輸入されている膨大な数のアメリカ生体牛に対しても、同様のモニターを行わなければならないであろう。

農水省衛生管理課によると、昨年のアメリカからの生体牛の輸入は百二十九頭。一九九九年から五年間で千三頭、BSEが問題になった九六年以降では四千頭以上であるという。

いろいろな経済的な思惑があるにせよ、BSEに対する対応は、各国、公平なものでなくではならないであろう。

USDA発表の緊急BSE対策の概要と、その評価



12月30日、USDAは、これまでのアメリカのBSE対策を抜本から変えた諸策を提示した。

USDA発表の詳細は、http://www.usda.gov/news/releases/2003/12/0449.htmを参照してください。

また、ベネマン農務長官の記者会見ビデオは、http://easylink.ibroadcastsmedia.tv/ripariane/secy12_30_03a.wmv
をクリックしてください。

対策の柱は次の通り。

1.ダウナー牛の食用禁止

2.BSE検査の最終結果がでるまでは、当該肉を流通にまわさない。

3.すべての牛の小腸や2歳半以上の牛の脳、せき髄など「特定危険部位」の食用禁止

4.と畜場における、危険部位を撒き散らしかねない空気噴射スタンガン(pneumatic-powered air injection stunners(PPAISs))の使用禁止。

(これについては、すでにMichael Gregerなどが、その危険性について、http://www.organicconsumers.org/madcow/Greger122403.cfmなどで指摘していた。)

5.機械による肉そぎ機であるARMやMRMの使用の規制強化

6.国際的に認識できる個体認識システムの創設

7.米国の対策を評価するための国際審査団の設置

肝心の検査方法の抜本的改善については、特に言及がなかった模様だが、日本が要求している全頭検査については、「今回の措置で十分で、全頭検査の必要はない。BSE発生確認後8日しかたっていない現時点で、そこまで考えるのは、時期尚早である。」と答えた。

しかし、この対策の提示が、日本も含むアメリカ牛肉輸入禁止措置解除の譲歩とすれば、この検査方法の改善策の提示が必要なのではなかろうか。

アメリカのRosa DeLauro民主党下院議員のように、三歳以上の牛すべての検査をすべしとの意見も、国内にはある。

また、関係者の間では、「今回のUSDAのダウナー牛規制は、BSE問題の所在を不明確にさせるだけ」との意見も出てきた。

すなわち、http://www.montanaforum.com/rednews/2003/12/31/build/ag/bse-downreax2.php?nnn=5によれば、今回のUSDAのダウナー牛規制措置は、BSE検出のためには、何の効果も、インセンティブもないという。

なぜなら、「今回の規制の対象は、病気にかかった牛であって、必ずしも、ダウナー牛ではないからである。」という。

規制の対象が間違った分野に及んでいることによって、これまで足の悪い牛を受け入れていたパッキングプラントは、もはや、その牛が自力で輸送車からおりることが出来ない限り、また、自力で柵を超えることが出来ない限り、足の悪い牛は、と畜場で処理されることにはならなくなる。

これらの牛は、足が悪いだけで、足以外のほかの肉の部分は、良質の肉を持っているのだから、これらの牛がと畜されないということは、肉資源の大きな無駄を生むことになるという。

これまで、これらの足の悪い牛は、熱がない限り、と畜場で処理できた。

今回のUSDAの措置では、ダウナー牛を所有している農場に対してのインセンティブが何も用意されていない。

そうなると、BSEにかかっている牛でも、射殺して土に埋めるだけで、たとえその牛がBSEであっても、世に明らかになることはない。

今アメリカにとって必要なのは、ダウナー牛に対する継続的・皆悉的検査の実施であるという。

そして、農場主が、ダウナー牛であることを明らかにすることにインセンティブを持たせることによって、BSEの所在が突き止められうる、インセンティブの用意であるという。

今回のUSDAのダウナー対策については、http://www.dodgeglobe.com/stories/010704/sta_0107040030.shtmlのような批判もある。

ここにきて、ダウナー牛を検査のために買い上げる案も浮上してきた。

買い上げ金額としては、一頭あたり200ドル程度を想定している。

また、アメリカ全戸の農場の90パーセントが100頭以下の飼育頭数の現状では、個体認識トレースシステムを導入する場合の費用負担などに、障害があることも指摘されている。

ボーカス上院議員は、2004年1月5日、Veneman農務長官に当てた手紙の中で、農家が、ダウナー・カウを検査に持ってきた場合、直接保証か、税制上のインセンティブか、いずれのインセンティブをあたえるべきだと、述べている。

すなわち、この手紙の中で、ボーカス議員は、USDAが、ただ、ダウナー・カウを食物連鎖から遮断するだけでは、消費者からの食の安全に対する信頼を回復することは出来ず、そのためには、歩行困難や病気のある牛が、検査の俎上に上ってくるためのインセンティブが必要であり、また、同時に、そのことによって、生産者が、過大な負担を負わないシステムの用意が必要である。」と述べている。

トレースシステムについて、USDAでは、すでに、eMerge Interactive, Inc., などと協力し、Process Verified Program の実施を2004年4月から計画している。

日本が、アメリカに強硬に要求している全頭BSE検査問題について、カナダやアメリカで、この日本側の提案を見直す動きが急速に出てきた。

すなわち、アメリカ議会下院議員のGeorge Miller氏は、1月7日、Miller's sweeping mad cow plan で、「と畜されたすべての牛を検査の対象に」(Test all cattle slaughtered in the U.S.)と、訴えている。

また、カナダでは、今回、アメリカで発見のBSE牛がカナダ産であることがDNA検査で判明したことを受けて、昨年のカナダBSE牛発見によって受けた輸出の損失がさらに膨れ上がることに危機感を抱きその損失に比較すれば、全頭検査によるコスト負担は、高いものとは思われないとの意見が急速に台頭してきており、http://www.canada.com/vancouver/theprovince/editorials/story.asp?id=F064D2E1-AF74-46E7-B275-88DC1C0AE451のように、「いまこそ全頭検査の時」
との意見も出てきた。

これらの世論に応じる形で、アルバータ州Ralph Klein首相は、国と独立した独自の動きとして、「全頭BSE検査論」を打ち出した。

すなわち、http://www.thestar.com/NASApp/cs/ContentServer?pagename=thestar/Layout/Article_Type1&c=Article&cid=1073474011197&call_pageid=968332188774&col=968350116467や、http://sask.cbc.ca/regional/servlet/View?filename=testing040109によれば、一頭あたりの検査コストを、30ドルとみて、5年間で9210万ドルの予算の元に、Ernie Spencerを中心としたPrairie Diagnostic Servicesとの協力の下に、一日24時間のテスト体制で、テスト数500をこなし、毎年三万頭について、現在の30倍以上の検査をやろうというものである。

検査費用は、行政区の負担とし、これを政府が承知しようとしまいと、地方行政区でやってしまうというもので、また、生後30ヶ月未満の牛の検査についても、考慮するという。

ちなみに、現在のカナダ全体の検査頭数は、8万頭と見られている。


原産国表示制度の実施が急務



食品企業に、多大の負担をかけるということで、アメリカでBSEが発生する、つい半月前の昨年11月24日に、2年間の実施延期を決めたのが、原産国表示制度(the Country of Origin Labeling (COOL) Act)である。

政府の予測によると、表示の義務付けは年間5億8千万ドルから 390億ドルの費用がかかる可能性があるとしている。

また、 http://www.ams.usda.gov/cool/coolbeef.pdfにみるように、流通各段階で、数項目にわたる記録をとっていかなくてはならないという、きわめて複雑で、手間のかかる制度ではある

本来、このCOOL制度は、一昨年5月に成立した2003年農業法により新設されたもので、昨年法律が成立し、昨年の10月1日から施行の制度であったが、その費用負担をめぐって、業界との間に摩擦が生じていた。

昨年7月14日、肉の原産国表示制度(牛肉、豚肉および羊肉。鶏肉はもともと対象ではない)の実施を、事実上1年遅らせる規定を含む法案が下院で成立した。

これは、2004年度(2003年10月1日〜2004年9月30日)農業歳出法案の一部として可決されたもので、具体的な規定は、「この法律によって割り当てられた、または利用可能ないずれの基金も、肉または肉製品の原産国表示制度の実施に使用してはならない(第743条)」というものである。

これに対して、上院のほうでは、2003年11月上旬に、期限通りの表示の義務付けを圧倒的な賛成で可決した。

このように上院と下院でまったくことなる結論となったことを受けて、2003年11月24日に、この法律の施行を、2004年9月30日施行のものを、2年間延期し、2006年9月30日施行としたのである。

この延期を何よりも喜んだのは、アメリカ・カナダ両国の牛肉産業関係者だった。

ところが、皮肉なことに、この延期が決まってからわずか半月で、アメリカ初のBSEが発生してしまった。

となると、風向きが変わってくる。

民主党の大統領候補のRichard Gephardtさんは、「ブッシュ大統領が、この原産国表示制度に予算をつけることを拒否したから、こんなことになってしまった。」と批判を強める。

この延期決定の後では、せっかくBSE発生の今こそ、肉製品に必要な原産国表示が、表示出来ないことになってしまう。

そのようなことから、議会関係者の間からは、この原産国表示制度を、何らかの形で、早期に実施できる環境を整えたいとする意見が強くなってきた。

かねてからこの制度の創設に熱心だった民主党上院議員のTom Daschle さんや、Tim Johnsonさんは、「2004年1月再開の議会で、この法案の復活を模索したい。」として、この制度に反対してきた共和党の議員も、「このような事態を迎えた後では、これまでの行動を恥ずかしく思っているに違いない。」として、この制度の早期実施を、Veneman農務長官主導の下で、実現することを要望している。

また、同時に、Tom Daschle 上院議員は、今回のUSDAのダウナー・カウの食品全面使用禁止措置を歓迎しながらも、「この措置によっては、外国からのダウナー・カウ由来製品の、アメリカ国内への流入を阻止することは出来ない。」とし、「政府がこれまでのダウナー牛についての方針を大転回した以上、原産国表示問題についても、出来る限り早く、積極的に実行することが必要である。」と述べた。

さらに、Tom Daschle 上院議員は、「ミートパッカー業者は、輸入肉について、原産国をはっきりさせる義務があり、また、他の食料品についても、同様の措置をとる必要がある。」とも、強調した。

また、Ben Nelson上院議員も、http://www.theindependent.com/stories/010804/new_nelsoncool08.shtmlで、他国よりの輸入牛肉の安全性を確認するためには、COOL制度の早期実施が不可欠と、強調している。

COOLの早期実施を求める声は、http://www.ifbf.org/publication/spokesman/story.asp?number=22081&type=Newsのように、有識者の中にも、多い。

しかし、1月20日からのアメリカ議会両院協議会で、さきに、COOL関係予算を排除した歳出予算案の修正をすることは難しく、2年遅れの実施を当初の2004年9月実施に取り戻し、COOL予算の復活を図るためには、この春の補正予算を待たなければならないものと推測されている。

近時のCOOL問題をめぐるアメリカ議会の動きについては、http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A60265-2004Jan6.html
をご参照

この関連サイトは、次のとおり


USDA Upgrades Nation's Mad Cow Defenses

Minnesota cattleman figures new regulations will cost him
USDA bans use of downed animals for meat, promises national ID system for cattle
USDA bans use of sick, downer cattle in human food
McDonald's Statement on USDA's Announcement on Additional Beef Safety Measures
US Announces Stricter Beef Safety Measures to Guard Against Mad Cow Disease
USDA bans use of downed animals for meat, promises national ID system for cattle
U.S. UNVEILS RULES TO PROTECT FOOD SUPPLY FROM MAD COW DISEASE
U.S. Announces New Beef Restrictions
12/31 USDA BSE Update: Animal Tracebacks May be Done in 'Days'

参考-ダウナー牛関係議論リンク



US mad cow case turns attention on "downer" cattle
U.S. Mad Cow Case Increases Pressure For Ban On Slaughter Of Downers
'Downer' cattle focus of debate
Mad cow disease incident revives concern about 'downer' animals
Mad cow case raises issue of slaughter
Should US do more testing?
Disease Heightens Beef Debate
The politics of cattle slaughter
Ill cow spurs policy debate
Consumer Groups Demand Stricter US Beef Safety Rules
Disabled cows are focus of disease concern
Democrats criticize administration over mad cow
Lax rules and testing put public, cattle industry at risk
Feds Lag Badly on Mad Cow Disease Shields
Critics: Low Danger to Food Supply, But More Can Be Done

その他の関連リンクは,
約三千に及ぶ「アメリカのBSE発生に関するニュースリンク集 」http://www.sasayama.or.jp/diary/madcowusa.htm
をご参照ください。


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